目次
「セキュリティ対策って、何から始めればいいんだろう?」
そのような疑問や不安をお持ちかもしれません。
デジタル化が進む現代では、情報漏えいや不正アクセスといった脅威が、常に身近にあります。
これらのリスクを無視することは、大切なデータを失うだけでなく、経済的な損失につながりかねません。
この記事では、セキュリティ対策の基本知識から、最新の脅威、そして今日から実践できる具体的な対策方法までをわかりやすく解説します。
最後までお読みいただくと、日常生活やビジネスシーンで直面する、セキュリティの問題を解決するための知識が身につきます。
安全なデジタル環境の構築に向けた第一歩として、お役立てください。
1. セキュリティ対策の基礎知識

セキュリティ対策は、情報技術の進展とともに、重要性を増しています。まずは基礎知識から、確認していきましょう。
1-1. セキュリティ対策とは
セキュリティ対策は、デジタル社会における、個人と組織の安全を守るための重要な対処法です。
セキュリティ対策の目的は、情報やシステムを保護し、不正アクセスやデータの盗難、改ざんから防ぐことです。
セキュリティ対策には、パスワードの設定や暗号化技術の利用、セキュリティソフトウェアの導入など、多岐にわたる手法が含まれます(詳しくは後述します)。
1-2. セキュリティ対策を怠ると生じるリスク
セキュリティ対策を怠ると生じるリスクとしては、以下が挙げられます。
【セキュリティ対策を怠ると生じるリスク(一例)】
- 個人情報の流出:不正アクセスにより個人情報が漏れると、プライバシーの侵害はもちろん、詐欺やアイデンティティ盗用(個人の身分情報を不正に利用する犯罪)への道を開くことになります。
- 金融詐欺:オンラインバンキングの認証情報が盗まれた場合、金融詐欺に悪用される恐れがあります。
- SNSの不正利用:SNSアカウントが乗っ取られると、偽情報の拡散や詐欺に加担するなどの被害に遭う可能性があります。
- データの改ざん:企業の重要なデータが不正に改ざんされた場合、ビジネスに甚大な影響を及ぼすことがあります。
- システムのダウン:サイバー攻撃によってシステムが停止すると、企業活動が滞り、多大な経済的損失をもたらします。
大きな被害に遭って、お金を失ったり安全な生活を脅かされたりする前に、できる対策をしっかりすることが大切です。
2. 基本的な3つのセキュリティ対策

本記事では最新のセキュリティ対策を解説していきますが、「先に、すぐにやるべき初歩的な対策を知りたい」という方向けに、まずは3つの基本対策をご紹介します。
- OSやソフトウェアの更新
- IDとパスワードの適切な管理
- ウイルス対策ソフトの導入
2-1. OSやソフトウェアの更新
1つめのセキュリティ対策は「OSやソフトウェアの更新」です。
OS・ソフトウェア・アプリのアップデート通知が届いたら、早急に対応し、常に最新版で利用しましょう。
というのは、OSなどに見つかったセキュリティホール(セキュリティ上の欠陥)は、攻撃者による不正アクセスやウイルス感染の原因となるからです。
OSやソフトウェアの開発元は、これらの脆弱性を修正するために、アップデートを提供します。
使用しているパソコンやスマートフォンで更新通知を受け取ったら、速やかにアップデートを実施してください。

2-2. IDとパスワードの適切な管理
2つめのセキュリティ対策は「IDとパスワードの適切な管理」です。
さまざまなWebサイトのログイン時に必要となる、IDとパスワードは、不正アクセスからアカウントを守る基本です。
強力なパスワードを設定し、適切に管理することが欠かせません。推測されにくいパスワードを設定し、パスワードの使い回しを避けましょう。
具体的には、「ログイン用パスワードは英大文字小文字 + 数字 + 記号で10桁以上」が推奨されます。

出典:内閣サイバーセキュリティセンター「インターネットの安全・安心ハンドブック」
ID・パスワードの適切な管理方法としては、以下に留意しましょう。
- パスワードは他人に教えない。
- 紙にメモして、人目に触れない場所で保管する。
- パスワード付きの電子ファイルでパソコン等の中に保管する。
- 不用意にインターネット上で入力・記録しない。
- ネットカフェ等、不特定多数が使用するパソコンでは、パスワードを入力しない。
- 利用頻度の低いサービスや不要なサービスのIDは削除する。
2-3. ウイルス対策ソフトの導入
3つめのセキュリティ対策は「ウイルス対策ソフトの導入」です。
ウイルスに感染してしまうと、情報が抜き取られたり、不正な侵入口を設置されたりと、さまざまな被害があります。
ウイルス対策ソフトを導入して、防御および監視することが推奨されます。
なお、ウイルス対策ソフトは、ただ導入するだけでは不十分です。
パターンファイル(既知のウイルスの特徴を記録したファイル)を、常に最新版へ更新しておかなければなりません。
定期的にウイルススキャン(ウイルス感染の有無を調べる診断)を行って、ウイルスに感染していないことを確認する作業も大切です。
2-4. 重要:セキュリティ脅威を知ることが対策強化の第一歩
上記は、セキュリティ対策の入門であり、必要不可欠ですが十分ではありません。
より進んだセキュリティ対策は、何から始めればよいでしょうか。その第一歩となるのは、「セキュリティ脅威を知ること」です。
インターネット上には多種多様な脅威が存在します。それらを正しく理解し、見分ける能力が、身を守る土台となります。
不正アクセス、フィッシング、ワンクリック請求など、「攻撃者の手口」を知ることが、セキュリティ対策に有効なのです。
次のセクションでは、2024年最新版のセキュリティ脅威をご紹介します。続けてご覧ください。
3. 【2024年】最新の情報セキュリティ10大脅威と対策のポイント

テクノロジーの進歩に伴い、情報セキュリティの脅威も変化し、新たなトレンドが出現しています。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)は、毎年「情報セキュリティ10大脅威」を公表しています。2024年版は下表のとおりです。
「個人」向け脅威(五十音順) | 初選出年 |
10大脅威での
取り扱い
(2016年以降)
|
インターネット上のサービスからの個人情報の窃取 | 2016年 | 5年連続8回目 |
インターネット上のサービスへの不正ログイン
|
2016年
|
9年連続9回目
|
クレジットカード情報の不正利用
|
2016年
|
9年連続9回目
|
スマホ決済の不正利用
|
2020年
|
5年連続5回目
|
偽警告によるインターネット詐欺
|
2020年
|
5年連続5回目
|
ネット上の誹謗・中傷・デマ
|
2016年
|
9年連続9回目
|
フィッシングによる個人情報等の詐取
|
2019年
|
6年連続6回目
|
不正アプリによるスマートフォン利用者への被害
|
2016年
|
9年連続9回目
|
メールやSMS等を使った脅迫・詐欺の手口による金銭要求
|
2019年
|
6年連続6回目
|
ワンクリック請求等の不当請求による金銭被害
|
2016年
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2年連続4回目
|
以下では、それぞれの詳細を解説していきます。
※注:本記事でご紹介するのは“情報セキュリティ10大脅威 2024[個人]”となります。
※同じく[組織]版も存在し、組織については「セキュリティ対策 企業」にて取り上げています。あわせてご覧ください。
3-1. インターネット上のサービスからの個人情報の窃取
1つめのセキュリティ脅威は「インターネット上のサービスからの個人情報の窃取」です。
これは、ソーシャルメディア、オンラインショッピング、クラウドサービスなど、多岐にわたるオンラインサービス利用中に、個人情報が第三者の手に渡るリスクを指します。
【窃取される個人情報の例】
- ログイン情報(IDとパスワード)
- クレジットカード情報
- 住所、電話番号などの連絡先情報
- サービス利用に関連するその他の個人データ
【個人情報摂取の手法(一例)】
- サービス側のセキュリティ上の欠陥を突いた攻撃:技術的な脆弱性を悪用した攻撃によって、不正に情報を抜き取ります。
- フリーWi-Fi(公衆無線LAN)の不正利用:安全でないネットワークを通じて、データを傍受・盗聴します。
- ソーシャルエンジニアリング:デジタル技術は使わずに、心理的な隙や行動のミスに付け込んで、アナログな手法で情報を聞き出します。(*1)
*1:ソーシャルエンジニアリングの例として、電話でパスワードを聞き出す、肩越しにキー入力を見る(ショルダハッキング)、ゴミ箱をあさる(トラッシング)などがあります(参考:総務省「ソーシャルエンジニアリングの対策」)
インターネット上のサービスからの個人情報の窃取の被害に遭わないためには、このような犯罪の存在を知り、警戒心を持つことが大切です。
【セキュリティ対策のポイント】
- 利用するサービスを選別する:信頼性が不確かなインターネットサービスは利用しないようにします。
- フリーWi-Fiに注意する:安易にフリーWi-Fiに接続しないようにします。
- ログイン情報を管理する:IDやパスワードは慎重に管理し、他人に教えないようにします。
3-2. インターネット上のサービスへの不正ログイン
2つめのセキュリティ脅威は「インターネット上のサービスへの不正ログイン」です。
この行為は、盗んだパスワードやセキュリティ情報を使用して、第三者がユーザーのSNS、メールアカウント、オンラインバンキングサービスなどに無許可でアクセスすることを指します。
【不正ログインの手法(一例)】
- パスワードの推測:よくあるパスワードや推測可能なパスワードを試みてアクセスします。
- セキュリティ質問(秘密の質問)の突破:ユーザーの公開情報をもとにセキュリティ質問の答えを推測し、アカウントへアクセスします。
- データベースへの不正アクセス:セキュリティが甘いWebサイトのデータベースからユーザー情報を盗み出します。
このような不正ログインの脅威に対抗するためには、以下のセキュリティ対策が有効です。
【セキュリティ対策のポイント】
- 強力なパスワードを使用する:複雑で予測しにくいパスワードを設定し、定期的に更新します。
- セキュリティ質問を適切に選ぶ:推測や調査が不可能な質問(自分しか知り得ないもの)を答えとして設定します。
- 多要素認証を利用する:パスワードだけでなく、SMSやアプリを通じた認証コードによる認証や、生体認証(顔認証や指紋認証)を併用してセキュリティを向上しましょう。
3-3. クレジットカード情報の不正利用
3つめのセキュリティ脅威は「クレジットカード情報の不正利用」です。
オンラインサービスや通販サイトの普及に伴い、クレジットカード情報に関連する被害が増加しています。とくにオンライン環境では、以下の手法により情報が盗まれ、悪用されるリスクがあります。
【クレジットカード情報の不正利用の手法(一例)】
- フィッシング攻撃:本物にそっくりな偽のメールやWebサイトを通じてユーザーを騙し、クレジットカード情報を入力させます。(*2)
- スキミング:オンラインではなく物理的な手法ですが、スキミング(クレジットカードから情報を不正に読み取る犯罪行為)された情報が、オンラインで不正利用されるケースがあります。
- 不正アクセスによるデータベース攻撃:セキュリティが不十分なオンラインショップなどのデータベースから、クレジットカード情報を盗み出します。
- フリーWi-Fi経由のデータ傍受:安全でないフリーWi-Fiを利用している際に、通信データを傍受され情報を窃取されます。
*2:フィッシングに関しては、この後に出てくる「3-7. フィッシングによる個人情報等の詐取」の項目で詳しく解説します。
クレジットカード情報の不正利用を防ぐには、信頼性の低いサイトを避けることや、定期的なカード利用明細の確認など、セキュリティ対策を講じることが推奨されます。
【セキュリティ対策のポイント】
- 信頼性の低いサイトは利用しない:オンラインでのサービス利用時には、サイトの信頼性を常に確認します。不審な点があれば、そのサイトの利用を避け、安全性が確認されたサイトを選択します。
- カード情報の直接入力を避ける:信頼性が万全とは確認できないサイトでやむを得ず入金する必要がある場合は、カード情報を直接入力せず、銀行振込またはPayPalやApple Payなどの決済代行サービスを利用します。
- カード明細を定期的に確認する:クレジットカード会社のサイトなどを利用して、こまめに利用明細を確認し、不審な取引がないか監視します。
- フリーWi-Fiで決済しない:フリーWi-Fiを利用中に、クレジットカードを利用したオンライン決済をしないようにします。
3-4. スマホ決済の不正利用
4つめのセキュリティ脅威は「スマホ決済の不正利用」です。
スマートフォンの紛失や盗難が直接的な原因となり、保存されている決済情報が悪用される事例が報告されています。たとえば、「落としたスマホで、モバイルSuicaが不正利用される」といったケースです。
このような不正利用は、紛失したデバイスを使って直接行われるほか、マルウェア(ウイルスをはじめとする不正なプログラムの総称)による情報窃取や、公共のWi-Fiを利用した攻撃によっても発生します。
【スマホ決済の不正利用の手法(一例)】
- デバイスの物理的な紛失や盗難:紛失または盗まれたスマートフォンを通じて、登録された決済情報が不正に使用されます。
- マルウェア感染:スマートフォンにインストールされた悪意のあるアプリが、バッグクラウンドで決済情報を盗み出します。
- セキュリティ設定の不備:スクリーンロックの設定や、決済アプリのセキュリティ設定が不十分な場合、それを突いて不正利用されるリスクがあります。
スマホ決済の不正利用を防ぐためには、まずは物理的なセキュリティ対策(スクリーンロックの設定、紛失時のリモートロックやデータ消去機能の活用)が大切です。
同時に、決済アプリのセキュリティ設定(二段階認証の利用、定期的なパスワード変更)も、徹底しましょう。
【セキュリティ対策のポイント】
- スマートフォン紛失時の対応を迅速にする:スマホを紛失した際は、速やかに電子マネーの利用停止手続き(*3)、デバイスの追跡、(必要に応じて)ログインパスワードの変更などの措置を講じます。
- 物理的なセキュリティ対策を十分に行う:スクリーンロックの設定、紛失時のリモートロックやデータ消去機能の活用など、事前にできる設定をしておきます。
- マルウェア対策を徹底する:不審な送信元からのメールを開く・URLをクリックする・アプリをダウンロードするといった行為は、マルウェアに感染するリスクを高めます。危険な行動をしないように注意します。
*3:たとえばモバイルSuicaの場合、「JR東日本:モバイルSuica>各種手続き>端末の紛失・盗難」にて利用停止手続きの手順が解説されています。
3-5. 偽警告によるインターネット詐欺
5つめのセキュリティ脅威は「偽警告によるインターネット詐欺」です。
これは、警告を装った偽のメッセージやポップアップによって、不安をあおりながら個人情報を盗み出す手法です。
たとえば、ユーザーにウイルス感染やセキュリティ脅威があると偽って警告し、ソフトウェアのダウンロードや個人情報の入力を促します。
【偽警告による詐欺の手法(一例)】
- 偽のセキュリティ警告ポップアップ:ウイルス感染を警告し、セキュリティソフトウェアのダウンロードを促します。
- 詐欺リンク:セキュリティの問題を解決するためと偽って偽サイトへ誘導し、ログイン情報やクレジットカード情報を盗み出します。
- 偽のセキュリティアップデート:システムやソフトウェアの更新を装い、マルウェアをインストールさせます。
- 技術サポート詐欺:セキュリティ問題の解決を名目に、リモートアクセスを求めたり、費用を請求したりします。
- 偽のセキュリティアプリケーション:セキュリティ向上を謳うアプリをダウンロードさせ、実際には個人情報を盗み出すマルウェアをインストールします。
攻撃者には、ユーザーを急かして冷静さを失わせる狙いがあります。
たとえば、ウイルス感染を警告するポップアップが突然出ると、ユーザーは動揺して、個人情報を入力したり、不要なソフトウェアをインストールしたりすることがあります。
このような状況では、冷静に対応することが重要です。
【セキュリティ対策のポイント】
- 警告メッセージに即座に反応しない:セキュリティ警告が表示された場合でも、焦ってリンクをクリックしたり、推奨されるソフトウェアをダウンロードしないようにしましょう。
- 公式サイトからソフトウェアを入手する:セキュリティソフトウェアやその他のプログラムをダウンロードする際は、公式サイトや信頼できるアプリストアから入手するようにしてください。不明なサイトからのダウンロードは、マルウェアに感染するリスクを高めます。
- ブラウザのセキュリティ設定を強化する:ブラウザのセキュリティ設定を見直し、強化しましょう。ポップアップブロッカーやフィッシング詐欺保護機能を活用することで、偽の警告や詐欺リンクから自身を守ることができます。
3-6. ネット上の誹謗・中傷・デマ
6つめのセキュリティ脅威は「ネット上の誹謗・中傷・デマ」です。
デジタル社会において、ネット上での誹謗・中傷・デマの拡散は深刻な問題です。
SNS・ブログ・掲示板を通じて、根拠のない偽情報や悪意のあるコメントが瞬く間に広まります。これにより、人々の名誉やプライバシーが大きく損なわれることがあります。
このような行為は、社会的・心理的なダメージに加え、経済的な損失を引き起こすことも少なくありません。
【ネット上の誹謗・中傷・デマの特徴】
- 匿名性:ネットの匿名性が、加害者に責任感の欠如をもたらし、罪の意識なく行動させる原因となります。
- 即時性:情報技術の進展により、誤情報や悪意あるコメントであっても一瞬にして広範囲に拡散します。
- 永続性:一度ネットに掲載された情報は、削除が困難であり、長期間にわたって影響を及ぼすことがあります。
- グローバル性:地理的な制約がなく、日本中・世界中に情報が広まってしまいます。
- 多様な手法:テキストだけでなく、画像や動画を含む多様なメディアを通じて、誹謗・中傷が行われます。
この問題への対応には、情報の真偽を見極めるリテラシーの育成、プラットフォームの監視と規制の強化、法的措置の実施など、個人・社会・法制度の各レベルでの取り組みが求められます。
個人ができる対策のポイントとしては、以下が挙げられます。
【セキュリティ対策のポイント】
- 情報の出所を確認する:ネット情報は、その出所や信頼性を慎重に確認します。公式ソースからのものか、信頼できる第三者による検証があるかを確かめる必要があります。
- SNSのプライバシー設定を見直す:自身のSNSアカウントのプライバシー設定を定期的に見直し、不要な情報共有を避けることで、誹謗・中傷のリスクを減らします。
- 法的措置を検討する:誹謗・中傷やデマによる被害が深刻な場合、法的措置を検討することも大切です。専門家や相談窓口へ相談し、適切な対応を準備しましょう。
3-7. フィッシングによる個人情報等の詐取
7つめのセキュリティ脅威は「フィッシングによる個人情報等の詐取」です。
フィッシング(phishing)とは、実在する金融機関や企業などになりすまし、個人情報をだまし取る手法です。
攻撃者は、信用できる組織を装ってユーザーに接触し、個人情報などの提供を促します。
【フィッシング詐欺の手法(一例)】
- 偽メール送信:実在する企業を偽装したメールで、ユーザーを偽のログインページに誘導して情報を盗みます。
- 偽サイトの作成:オンラインバンキングやネットショップなどに酷似した偽サイトを作り、訪れたユーザーから情報を詐取します。
- スピアフィッシング:スピア(spear)とは槍のことで、槍で狙うように特定の個人や組織をターゲットにし、その相手専用に作成された文面のメールで信頼を得て、情報を盗み出します。
- スミッシング:スミッシングはSMSを通じたフィッシングのことで、巧妙なショートメッセージ(SMS)で送信したURLをクリックさせて情報を盗む手法です。
フィッシング詐欺から自身を守るためには、上記のような例が多発していることを知って警戒し、慎重に行動しなければなりません。
【セキュリティ対策のポイント】
- メール内のリンクや添付ファイルを信用しない:知らない送信者からのメールには慎重に対応し、リンクや添付ファイルの開封を避けます。
- メールの差出人を確認する:メールが正規の企業から送られたものかどうかを、差出人のメールアドレスを確認して検証します。
- セキュリティ対策ソフトを利用する:信頼できるセキュリティ対策ソフトをインストールし、常に最新の状態に保つことで、フィッシング詐欺を含むさまざまな脅威を回避できます。
- 多要素認証を活用する:設定できる多要素認証はすべて設定し、パスワードだけでなく、追加の認証手段(SMS認証や生体認証など)を用いてアカウントのセキュリティを強化します。
3-8. 不正アプリによるスマートフォン利用者への被害
8つめのセキュリティ脅威は「不正アプリによるスマートフォン利用者への被害」です。
不正アプリによる被害は、スマートフォンユーザーにとって深刻なセキュリティリスクです。
一見便利そうに見えるこれらのアプリは、実際には個人情報やデータを不正に収集するために開発されています。
たとえば、連絡先やメッセージ履歴、位置情報など、アプリの本来の機能とは関係ない情報へのアクセスを求めることがあります。
【不正アプリの手法(一例)】
- 過剰なアクセス権限の要求:正当な理由なく、電話帳や位置情報などの不必要な権限をユーザーに要求します。
- 個人情報の収集と送信:ユーザーの知らない間に個人情報を収集し、外部のサーバーへ送信します。
- マルウェアの配布:デバイスに悪意のあるソフトウェアをインストールし、さらなる不正アクセスの道を開きます。
- 広告の過剰表示:使用中に頻繁に広告を表示し、ユーザーの利便性を奪います。
- フィッシング詐欺の実行:偽のログイン画面を通じて、ログイン情報を盗み取ります。
不正アプリによる被害を防ぐためには、アプリのインストール時に提供元の信頼性を確認し、アクセス権限の要求内容を慎重に検討することが重要です。
【セキュリティ対策のポイント】
- アプリの信頼性を確認する:インストールするアプリの開発者情報やレビューを確認し、信頼できるかどうかを検討します。
- 公式アプリストアを利用する:アプリは、Google Play StoreやApple App Storeなどの公式アプリストアからダウンロードします。
- アクセス権限は慎重に承認する:アプリによるアクセス権限の要求には慎重に対応し、必要以上の権限をアプリに与えないようにします。
3-9. メールやSMS等を使った脅迫・詐欺の手口による金銭要求
9つめのセキュリティ脅威は「メールやSMS等を使った脅迫・詐欺の手口による金銭要求」です。
これは、メールやSMSでお金を要求される詐欺です。
攻撃者は、実際には発生していない個人情報の漏えいや法的なトラブルがあったと嘘をつき、不安や恐怖をあおります。親しい人物からの緊急の依頼を、偽装することもあります。
被害者の心理を巧みに操り、今すぐの対応を促すことで冷静さを失わせるのが特徴です。
【メールやSMS詐欺の手法(一例)】
- 個人情報漏えいの脅迫:被害者の個人情報が漏えいしたと偽り、その解決のために金銭を要求します。
- 偽の法的トラブル:法的な問題に巻き込まれていると主張し、その解決費用として金銭を要求します。
- 緊急の金銭請求:家族や友人が事故やトラブルに巻き込まれたと偽り、緊急の手術費用や解決金などの名目で金銭を要求します。
- 偽の賞金・返金詐欺:宝くじの当選や過払い金の返還を装い、手数料名目で金銭を要求します。
この種の詐欺から身を守るためには、まず疑う姿勢を持つことが重要です。
【セキュリティ対策のポイント】
- 知らない送信元からのメッセージに反応しない:メールやSMSが知らないアドレスや番号から届いた場合、リンクをクリックしたり、添付ファイルを開いたりしないようにしましょう。金銭を要求された場合はとくに警戒が必要です。
- 直接確認を行う:親しい人物や知っている企業を名乗っている場合、直接その人物や企業に連絡を取り、情報の真偽を確認します。届いたメールやSMSで提示された連絡先ではなく、公式サイトなどで独自に調べた連絡先を使用することが重要です。
3-10. ワンクリック請求等の不当請求による金銭被害
10番めのセキュリティ脅威は「ワンクリック請求等の不当請求による金銭被害」です。
ワンクリック請求は、ユーザーが特定のWebサイトを訪れた瞬間に契約が成立したと主張し、不当に金銭を請求する手口です。
アダルトサイトや有料コンテンツサイトで多く見られ、ユーザーが意図せずにクリックしただけで、高額な利用料金を請求されるケースがあります。
攻撃者は、契約の成立を偽って支払いを迫り、「放置すれば裁判になる」などと脅されることもあります。
【ワンクリック請求の特徴】
- 偽の契約成立通知:ユーザーが何かをクリックしただけで契約が成立したと偽り、確認画面や同意のプロセスを経ずに請求します。
- 高額な請求:実際にはサービスを利用していないにもかかわらず、不当に高額な料金を請求します。
- 法的な脅迫:支払いを拒否すると法的措置を取ると脅迫し、ユーザーの不安をあおります。
- 個人情報の要求:料金の支払いにあたり、さらなる個人情報を要求することがあります。
- 解約の困難さ:実際には存在しないサービスのため、解約手続きが不明確であったり、解約を困難にする設計がなされています。
ワンクリック請求詐欺から身を守るためには、以下の対策が有効です。
【セキュリティ対策のポイント】
- 警戒心を持つ:疑わしいサイトやリンクには注意を払い、安易にクリックしないようにします。
- すぐに支払いをしない:請求が来た場合でも、すぐに支払うことなく、サイトの信頼性や契約の正当性を確認します。
- 個人情報は提供しない:個人情報は慎重に扱い、不要な情報提供は避けます。
- 公的機関に相談する:不当な請求に対しては、消費者センターや警察などの公的機関に相談します。
4. セキュリティ対策に取り組むうえでの留意点

最後に、セキュリティ対策に取り組むうえで覚えておきたい留意点をお伝えします
4-1. サイバーセキュリティ対策9か条
前のセクションでは、実際のセキュリティ脅威と照らし合わせながら、対策ポイントをご紹介しました。
おさらいするための総まとめとして、以下の9か条をご確認ください。
(1)OSやソフトウェアは常に最新の状態にしておこう
最新の攻撃情報に対抗するため、OSやソフトウェアメーカーが提供している修正用アップデートを常に適用しましょう。
(2)パスワードは長く複雑にして、他と使い回さないようにしよう
パスワードは長く複雑にし、機器やサービス間で使い回さないことを徹底して安全性を高めましょう。
(3)多要素認証を利用しよう
サービスへのログインを安全に行うために、認証用アプリや生体認証を使った多要素認証を利用しましょう。
(4)偽メールや偽サイトに騙されないように用心しよう
フィッシング詐欺メールは年々手口が巧妙になっています。心当たりがあるものでもメールやメッセージのURLには安易にアクセスしないようにしましょう。
(5)メールの添付ファイルや本文中のリンクに注意しよう
心当たりのない送信元からのメールに添付されているファイルやリンクはもちろん、ファイルやリンクを開かせようとするものには注意しましょう。
(6)スマホやPCの画面ロックを利用しよう
スマホやパソコン(PC)の情報を守るには、まず待ち受け画面をロックすることが第一です。短時間であっても端末を手元から離す際はロックを忘れないようにしましょう。
(7)大切な情報は失う前にバックアップ(複製)しよう
大切な情報を失っても、バックアップから復元することで被害を軽減することができます。普段からバックアップして攻撃や天災に備えましょう。
(8)外出先では紛失・盗難・覗き見に注意しよう
外出先でスマホやパソコンを使うときは、背後からの覗き見に注意しましょう。また、紛失・盗難の危険があるので、公共の場でスマホを放置することは絶対にやめましょう。
(9)困ったときは1人で悩まず、まず相談しよう
インターネットでの被害に遭遇したら、1人で悩まず各種相談窓口に相談しましょう。
出典:内閣サイバーセキュリティセンター「インターネットの安全・安心ハンドブック」
4-2. 企業は組織として取り組むことが大切
本記事では、個人・組織に共通するセキュリティ対策一般について解説しました。
一方、企業にとっては、組織的にセキュリティ対策に取り組むことも重要です。
企業だからこそ気を付けたいサイバー攻撃や、近年急速に広まったテレワークの課題など、セキュリティ対策なしには、安定的な経営が難しい状況となっています。
企業に特化したセキュリティ対策は「セキュリティ対策 企業」にまとめています。あわせてご覧ください。
5. まとめ
本記事では「セキュリティ対策」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
基本的な3つのセキュリティ対策として、以下をご紹介しました。
- OSやソフトウェアの更新
- IDとパスワードの適切な管理
- ウイルス対策ソフトの導入
2024年の最新情報として、セキュリティ10大脅威と対策のポイントを解説しました。
- インターネット上のサービスからの個人情報の窃取
- インターネット上のサービスへの不正ログイン
- クレジットカード情報の不正利用
- スマホ決済の不正利用
- 偽警告によるインターネット詐欺
- ネット上の誹謗・中傷・デマ
- フィッシングによる個人情報等の詐取
- 不正アプリによるスマートフォン利用者への被害
- メールやSMS等を使った脅迫・詐欺の手口による金銭要求
- ワンクリック請求等の不当請求による金銭被害
この記事を通じて、セキュリティ対策の基本から、最新の脅威、具体的な対策方法までを把握していただけたことと思います。
セキュリティ意識を持ち、適切な対策を講じることで、現代のデジタル環境を安全に暮らしていきましょう。