目次
「Microsoft 365とOffice 365って違いは何?」
と混乱しているところかもしれません。
両者はときに同じ意味で使われ、何を意味しているのか、混乱が生じています。
Office 365とMicrosoft 365の歴史は少々複雑で、名称変更やサービス統合が行われたことが、混乱の一因といえます。
2023年12月時点での状況を整理すると、以下のとおりです。
かつては「Office 365」<「Microsoft 365」の関係にあり、Office 365はMicrosoft 365に含まれるサービス群として存在していました。
現在では、Office 365はMicrosoft 365に統合されています(本文中で、詳しく解説します)。
本記事では、このように混ざって理解しづらい、MicrosoftおよびOfficeのサービスについて、情報を整理しました。
これまでMicrosoftのサービスになじみのなかった、Macユーザー・Googleユーザーの方にもわかりやすく解説しています。
「今までMicrosoftはあまり使っていなかったけれど、自社への導入を検討している」
という方も、ぜひ参考になさってください。
1. Office 365とMicrosoft 365の違い

さっそく、「Office 365とMicrosoft 365の違い」を整理していきます。
ネット上で検索すると、「2つは違う」という情報と「2つは同じ」という情報が交錯していて、「真実は何?」と混乱する状況になっています。
1-1. 前知識:“Office”と“365”
説明を進める前の前知識として、基本用語を整理しておきましょう。
- “Office”とは:1990年代より使われてきたMicrosoftのブランド名で、Word・Excel・PowerPoint・Outlookなどのアプリの総称です。
- “365”とは:Microsoftがクラウド型サービスの表現としてブランド名に使ってきた語句です。Officeのクラウド版には「Office 365」と名付けられました。
1-2. 【過去】Office 365=Microsoft 365ではなかった
Microsoft 365とOffice 365の違いを調べようとGoogleなどで検索すると、Microsoft公式の「「Microsoft 365」と「Office 365」の違いとは?」が上位にヒットします。

何が書かれているのか、以下に引用します。
2020 年 4 月、Microsoft のサブスクリプションサービス「Microsoft 365」が登場。当初は詳細が発表されていなかったため「Microsoft 365」は「Office 365」に代わる新たなクラウドサービスという受け止め方をされていました。現に、多くの IT 管理者が「Office 365」から「Microsoft 365」に完全に切り替わったと考えていたほどです。
ところが、その後発表されたサービス プランの内容を見ればわかりますが、サブスクリプション モデルのオフィス スイートのプランとして「Office 365」は変わらず存在し、「Microsoft 365」という名称のプランとは料金や含まれる製品/サービスなどが異なっていることがわかります。
出典:Microsoft for business「「Microsoft 365」と「Office 365」の違いとは?」
Microsoft公式情報ですから、「Office 365とMicrosoft 365は明らかに違うもの」と理解してしまいますが、このMicrosoftの記事は、2021年6月の情報で古いのです。
1-3. 【現在】Office 365=Microsoft 365と捉えるのが一般的
2023年現在は「Office 365」は「Microsoft 365」へ統合されており、両者は同じものとして捉えられます。
「Office 365はMicrosoft 365に名称変更になりました」
「Office 365とMicrosoft 365は同じものです」
といった解説をよく見かけます。
一見、Microsoft公式の情報と矛盾するように思えますが、これは正しいと判断してもいいでしょう。
1-4. 大企業および教育機関向けプランには「Office 365」が残っている
注意点として、2023年12月現在、旧Office 365のほとんどがMicrosoft 365に統合されていますが、まだ一部に「Office 365」の名称のプランが残っています。
まず、Microsoft 365のプランは、大きく4つに分かれています。
個人向けや一般法人向けのプランからは、すでにOffice 365は完全になくなり、Microsoft 365のプランのみとなりました。
一方、大企業向けや教育機関向けのプランでは、まだ「Office 365」のプランも選択できるようになっています(2023年12月現在)。
※大企業向けのMicrosoft 365とOffice 365のプランで何が違うのかについては、本記事の後半で触れていますので、続けてご覧ください。
2. Office 365とMicrosoft 365の変遷

「Office 365とMicrosoft 365の違いを、もう少し深く理解したい」
という方は、これまでの変遷を整理すると、スッキリ把握できます。
以下、時系列で確認していきましょう。
2011年6月:Office 365のサービス開始
2017年7月:Microsoft 365の登場(大企業向け)
2020年4月:Microsoft 365を個人向けにも展開
2021年6月:違いを解説した記事の公開
2022年10月:Officeブランドの段階的廃止を発表
2022年11月:Office.comの名称をMicrosoft 365.com に変更
2023年1月:アプリの名称変更をもって正式移行が完了
2-1. 2011年6月:Office 365のサービス開始
「Office 365」の提供が開始されたのは、2011年6月のことです。
これは1990年代より発売されてきた「Microsoft Office」(*1)のクラウド版という位置づけでした。
*1:Microsoft Officeは、Word・Excel・PowerPointの3つからスタートした、デスクトップ業務向けのソフトウェアパッケージです。
Office 365が登場した2011年当時、Microsoftは、GoogleのGmailやGoogle Meet、スプレッドシート、カレンダー等を含むクラウド型サービス「Google Workspace(旧G Suite)」との競争に直面していました。
そこで、常に最新のクラウドサービスを提供するプラットフォームとして設計されたのが、「Office 365」でした。
参考:Microsoft「Looking back at 10 years of Microsoft 365 making history」
2-2. 2017年7月:Microsoft 365の登場(大企業向け)
2016年にMicrosoftは「Secure Productive Enterprise(SPE)」(*2)をリリースしています。
翌年の2017年7月、SPEを継承する形で、Office 365 Business Premiumやその他のサービスを組み合わせた、エンタープライズ(大企業向け)のサブスクリプションサービスとして、「Microsoft 365」の提供をスタートしました。
*2:Secure Productive Enterpriseは、セキュリティ対策や生産性向上のための企業向けサービスです。
この段階では、中小企業向けや個人向けのOffice 365は、上記のMicrosoft 365とは別個のサービスとして存在しています。
参考:Microsoft Learn「Update history for Microsoft 365 Apps (listed by date)」
2-3. 2020年4月:Microsoft 365を個人向けにも展開
2020年4月、Microsoftは個人向けにも「Microsoft 365」の提供を開始しました。
この時点では、「Office 365」は「Microsoft 365」に含まれるプロダクト群の位置づけです。Office 365は、Word・Excel・PowerPointなどのOfficeアプリケーションを提供していました。
「Office 365に、OneDriveストレージやSkype通話などの特典がセットされたものが、Microsoft 365」と考えるとわかりやすいでしょう。
2-4. 2021年6月:違いを解説した記事の公開
2021年6月30日の段階では、前出の「「Microsoft 365」と「Office 365」の違いとは?」が公開されています。
記事の出だしは、以下のとおりです。
2020 年 4 月、Microsoft は「Microsoft 365」という新たなクラウドサービスの提供を発表。ところが、従来サービスである「Office 365」と何が違うのか、そもそも名称やプランが変わっただけなのか? などの疑問を持つユーザーが一定数いることがわかってきました。その違いを明確に理解するために、今回の記事では、Microsoft がこれまでに提供してきた、Office の進化の歴史をおさらいしながら、それぞれの製品の特性と進化を整理したいと思います。
出典:Microsoft for business「「Microsoft 365」と「Office 365」の違いとは?」
少なくともこの時点では、Office 365とMicrosoft 365は、棲み分ける方針だったことがうかがえます。
2-5. 2022年10月:Officeブランドの段階的廃止を発表
2022年10月、Microsoftは極めて大胆な決断を発表します。
30年以上にわたって親しまれてきた「Office」のブランドを廃止して、「Microsoft 365」に統合するという決断です。
Officeのアプリ群(Word、Excel、PowerPointなど)はそのまま残りますが、それらを冠するブランド名がOfficeから「Microsoft 365」へと、リブランディングされることになりました。
参考:CNET「It's Official Microsoft Office Will Soon Become Microsoft 365」
2-6. 2022年11月:Office.comの名称変更
リブランディング発表の翌月、2022年11月より、まずは「Office.com」から名称変更がスタートしました。
「Office.com」は、Microsoftが提供するWebサイトで、Office 365の各種サービスへのアクセスポイントとなっていたものです。
現在、https://www.office.com/ にアクセスすると、以下のとおり表示されます。

出典:Microsoft
2-7. 2023年1月:アプリの名称変更をもって正式移行が完了
段階的にリブランディングが進められてきた「Microsoft 365」への統合ですが、2023年1月のモバイル版Officeアプリの名称変更をもって、正式に移行が完了しました。

このような経緯から、現在では、「Office 365=Microsoft 365は同じ」と捉えることが一般的です。
3. 「Microsoft 365」と「Office 365 E1 / E3 / E5」の違い

前述のとおり、現在でも、エンタープライズ(大企業向け)のプランでは、「Office 365」を契約できるようになっています。
プランの違いを見ていきましょう。
3-1. Microsoft 365 エンタープライズ プランの概要

出典:Microsoft「Microsoft 365 Enterprise のプランの比較」
上記のとおり、大企業向けプランのページにアクセスすると、Microsoft 365とOffice 365の両者から選択できるようになっています。
[Microsoft 365]のタブをクリックすると、E3・E5・F3の3つのプランが表示されます。

出典:Microsoft「Microsoft 365 Enterprise のプランの比較」 ※2023年12月現在
[Office 365]のタブをクリックすると、「Microsoft 365 Apps for enterprise」に加えて、Office 365 E1・E3・E5のプランが表示されます。

出典:Microsoft「Microsoft 365 Enterprise のプランの比較」 ※2023年12月現在
3-2. 同レベル同士の比較
Microsoft 365とOffice 365の違いは、Microsoftによれば、
〈Office 365 ではクラス最高の生産性向上アプリを利用でき、Microsoft 365 ではこれにインテリジェントなクラウド サービスが統合されています〉
とのことです。
出典:Microsoft 365「大企業向け Microsoft 365 E3 と Office 365 E3 の比較」
Microsoft 365とOffice 365 のそれぞれのレベルが異なると、違いがわかりにくいので、ここでは同レベル同士(E3)を比較してみましょう。

出典:Microsoft 365「大企業向け Microsoft 365 E3 と Office 365 E3 の比較」より作成
※2023年12月現在
Microsoft 365 E3は、Office 365 E3のすべてを含有したうえで、デスクトップ・モバイル版アプリやグループウェア、セキュリティ面が強化されています。
4. これから導入するならMicrosoft 365を選ぶべき理由

業務アプリを利用するだけなら、 サブスクリプション型のOffice 365ではなく、買い切り型の「Office 2021」という選択肢もあります。
しかしながら、これから導入するなら、Microsoft 365が推奨されます。その理由を3つ、ご紹介します。
- 常に最新バージョンを利用できる
- ワールドクラスのセキュリティ機能を備えている
- 拡張性が高く独自のシステムを開発できる
4-1. 常に最新バージョンを利用できる
1つめの理由は「常に最新バージョンを利用できる」です。
Microsoft 365はサブスクリプション型のサービスであるため、新機能が追加されたり、セキュリティが強化されたりするたびに、それらの更新をすぐ利用できます。
とくに近年では、OpenAI社のChatGPTをきっかけとして、「生成AI」をめぐる変革の真っただ中です。
たとえば、Microsoft 365で機能する生成AI「Copilot for Microsoft 365」は、2023年11月より企業向けに提供が開始されました。

出典:Microsoft「Copilot for Microsoft 365」
このような新しい波に乗り遅れることなく、ビジネスを前進させていくためには、Microsoft 365は優れた選択肢といえます。
4-2. ワールドクラスのセキュリティ機能を備えている
2つめの理由は「ワールドクラスのセキュリティ機能を備えている」です。
近年、セキュリティ対策の甘さが原因で、壊滅的なダメージを負う企業は、後を絶ちません。
「攻め」の姿勢に偏ることなく、「守り(セキュリティ)」にもしっかり投資して、自衛すべき時代といえます。
Microsoft 365は、あらゆる規模の組織に対して、高度なセキュリティ機能を提供してくれる安心感があります。
これには、データ損失防止、個人情報の保護、脅威インテリジェンス(攻撃者から保護するためのあらゆる情報把握や理解・適用)などが含まれます。
4-3. 拡張性が高く独自のシステムを開発できる
3つめの理由は「拡張性が高く独自のシステムを開発できる」です。
Microsoft 365は、企業が独自システムを開発するためのプラットフォームとして、利用できます。
具体的には、Microsoft 365 開発者プログラムを利用することで、独自のアプリやソリューションを開発して、生産性を大幅に向上できます。
ただし、具体的にどのようなプランや手法で導入するのかが最適かについては、業務内容や規模、目標によって異なります。
5. まとめ
本記事では「Microsoft 365とOffice 365の違い」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
- 【過去】Office 365=Microsoft 365ではなかった
- 【現在】Office 365=Microsoft 365と捉えるのが一般的
- 大企業および教育機関向けプランには「Office 365」が残っている
Office 365とMicrosoft 365の変遷は以下のとおりです。
2011年6月:Office 365のサービス開始
2017年7月:Microsoft 365の登場(大企業向け)
2020年4月:Microsoft 365を個人向けにも展開
2021年6月:違いを解説した記事の公開
2022年10月:Officeブランドの段階的廃止を発表
2022年11月:Office.comの名称変更
2023年1月:アプリの名称変更をもって正式移行が完了
これから導入するならMicrosoft 365を選ぶべき理由として、次の3つが挙げられます。
- 常に最新バージョンを利用できる
- ワールドクラスのセキュリティ機能を備えている
- 拡張性が高く独自のシステムを開発できる
Microsoftのオフィススイートは、Office からMicrosoft 365へと変遷しました。これからまた、生成AIを中心として、新しい時代が到来すると考えられます。
変革の中で競争を勝ち抜くために、Microsoft 365をうまく活用して生産性を高め、企業価値の向上へとつなげていきましょう。