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国内DX市場の現在

DXの市場は世界的に拡大傾向にあり、富士キメラ総研の調査データによれば、国内のDX市場は2030年度には5兆1,957億円に達し、2020年度と比較すると3.8倍にまで拡大すると予想されています。
IMD (スイスの国際経営開発研究所)の「世界デジタル競争力ランキング2022」によればアジア圏の中で日本はデジタル技術の利活用能力に関する知識、技術、未来への対応の3つの観点から評価して、63カ国中の29位となっています。欧米をはじめ、台湾、香港、韓国等とも大きく差が開いており、日本はアジア諸国の中でもDX推進が遅れているといえます。


経済産業省の公開した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」をみると“2025年までにシステム刷新”という表現が強調されており、企業の既存基幹システム老朽化やテクノロジーの進化に伴う先端IT人材不足への対処等が急務とされています。
DX推進が遅れた企業では、システム維持管理費の増大や技術的負債から生じる業務基盤の維持や継承問題、新たなテクノロジーの活用によるセキュリティリスクの脅威といった問題に直面していくこととなります。

本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)とは収益構造に影響を与える

DX推進の課題と対策について議論する前に、そもそもDXという言葉の意味するところは何なのか?について押さえておく必要があります。世間で進んでいるDXの多くはデジタルツールの導入をはじめとする、既存業務のデジタル化やレガシーシステムの刷新等ではないでしょうか。
これは個別業務のデジタル化であり、「デジタライゼーション」と言われ、極めて狭義のDXといえるでしょう。

一方、本質的なDXとは、「デジタルトランスフォーメーション」のことを指し、組織全体の業務プロセスのデジタル化をはじめ、“新たな顧客価値創出や収益構造・ビジネスモデルの変革”等を意味します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは収益構造に影響を与えることを説明する図

現代はデジタルデバイスの普及とデータを記録し、演算する環境が整い、大量のデータを活用したアウトプットを実現できるようになりました。
データ活用はDXの要ともいえる要素で、例えば経済産業省の「ものづくり白書」では、製造業においてデータ活用が付加価値をもたらすポイントであることを述べています。製造業に限らず、あらゆる業種においてデータを用いた付加価値性の高い新サービスの創出や、生産、流通、マーケティング等のプロセス刷新、事業構造の再構築といった変革が進んでいます。


激しい変化の世界で、企業が顧客へ価値を提供し続けるためには、単に個別業務を効率化させるデジタライゼーションではなく、ビジネス・収益構造そのものにインパクトを与えるような本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指していかなければいけません。

当社アンケート調査から見えるDX推進の課題と対策

DX推進が成功しない原因

個別業務のデジタル化に留まるデジタライゼーションであれば、比較的進めやすいものの、新規ビジネス創出や収益構造の変革を目指す本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)は容易ではありません。


クエストが行ったアンケート調査から、DX推進を阻む要因は大きく分けて2つありました。
一つ目が、「社内抵抗・ハレーション」、二つ目が「人材・ノウハウ不足」です。

当社アンケート調査から見えるDX推進の課題と対策

一つ目の「社内抵抗・ハレーション」に関しては、業務部門から積極的な協力が得られないことです。特に事務職系やシステム部門などの専門業務をこなす部門からは抵抗意識が強いという意見がみられました。
すでに慣れ親しんだ業務や役割がある状態から、急な方向転換を促すとなれば摩擦も多く、DXに関わる社員の負荷も一時的に増加します。結果として企業がDXを推進しづらい環境を生み出す要因となってしまっています。


二つ目の「人材・ノウハウ不足」については、そもそも社内のDX推進担当の知識やスキル、リソースが足りておらず、企画・要件定義の段階でつまずくケースが少なくないようです。
外部パートナーとしてSier(システム会社)を利用した場合も、Sier側に企業の業務知識や社内文化の理解が足りないことで、社内での発言権に影響し、プロジェクトがうまく進まないケースも。このように、DXを推進する主体の力が弱い場合、経営層の理解と協力も得ることが難しく、予算、リソース配分、社内周知を含め、高いコミットメントを得られません。
結果、小規模なデジタライゼーションにとどまってしまうケースが多くなります。

DX推進の成功のカギは経営層へのアプローチが大事であることを示すイメージ画像

DX推進の成功のカギは経営層へのアプローチ

DX推進を阻む「社内抵抗・ハレーション」、「人材・ノウハウ不足」の問題をクリアするにはどうすればいいのか?アンケート調査で得られた改善策の考察を紹介します。

トップダウンによるDX推進で抵抗の抑制と、経営層のコミットでリソースを確保

アンケート回答の中でも特に効果が期待できそうな改善策が“経営層の理解を獲得し、トップダウンの指揮のもと、DXを推進する”という改善策です。

小規模な企業の場合、DX推進を行う担当者の権限や社内における影響力が強ければ、DX推進は行いやすいと考えられます。
しかし、組織が大きくなれば、全社的な理解を得てDX推進の社内抵抗を抑えるのは困難です。また、人材の確保や十分な予算確保も難しいといえます。


そこで、「経営層の理解と協力をいかに得られるか」がポイントになります。
大手製造メーカーのDX推進部 部長の回答によれば、「欧米の製造業でDX化が進んでいる企業を分析し続けたところ、日本と比較しデジタル技術導入の取組み開始が10~15年ほど早かったものの現状業務を変更することには欧米企業でも苦戦していました。そんな中うまくいった企業はトップダウンでしかないことがわかりました。そのため、経営層にDX推進の重要性と価値を理解してもらい、トップダウンで進めていくことが重要です。」という回答がありました。


その他、流通小売業向けサービス提供会社のマーケティング部門長の回答には、「DXという言葉は数年前のバズワードのように扱われることも多いと思いますが、DX推進がうまくいかない企業の原因ほとんどは経営者側の理解不足だと感じます。経営者がDXの本質を理解していないので、単純なシステムの導入などに陥り、結局ツール導入が目的になってしまっている企業が多いと周りを見ていても思います。」という回答がありました。


これらの回答から、経営層の理解とコミットが得られていない状況では、前述の社内抵抗や、人材・リソース不足の問題をクリアすることは困難だと考えられます。
そうすると本質的なDX推進には到底及ばず、ツール導入と予算消化が目的化してしまう形式的なDX推進になってしまうリスクが潜んでいます。

経営層の関心はDX推進で得られる成果

では、経営層のコミットを得るためにはどうすればいいのでしょうか?上場企業 DX推進 部長のアンケート回答では、「DXはツールなので、本質的に経営層はDXを望んでいません。あくまでDXの先にある果実が欲しいので、その手段の一つとしてDXを検討しています。」という回答が得られました。


経営層が求めるDXの先にある果実とは、即ち会社の成長です。その指標となるのは売上や利益の拡大、株価の上昇です。


昨今の潮流からして「DXは企業の取り組みとして必須だから、年間を通して一定のDX予算を確保している」という企業も少なくないでしょう。
しかし、「予算があるから施策をやる」という姿勢では、前述の通り、「社内抵抗・ハレーション」や「人材・リソース不足」により、個別業務のデジタライゼーションに留まってしまいます。


投資効果の提示や、DX推進がもたらす将来的な成果をイメージさせることができれば経営層の理解が得られます。
結果、トップダウンでDX推進を進めやすくなり、社内抵抗の抑制ができ、予算、人材面の問題も緩和される可能性が高まります。そうすることで本質的なDXに取組みやすい環境が整います。

体系化されたDX支援と、成果が出るまで伴走してくれるパートナー選びが大切

アンケートでは、“パートナー選びのポイント”に関する回答もありました。
大手旅行会社 DX推進本部のディレクター職の方の回答では「DX支援のサービスがパッケージ化されており、一貫した仕組みを導入できるのであればそれを行いたい。実際に手を動かし、企業風土を理解し、浸透や教育まで伴走してくれる会社さんがいたらお願いしたい。」という回答がありました。


一方、建設機械メーカー DX戦略部門課長兼マーケティング責任者の方からは「Sierの方々においても、システム開発と運用保守で留まり、改革まで引き上げたり開発した後の改革達成まで歩み寄らないケースがほとんどです。だからこそ、社内IT部門に伴走し、事業部門のやりたいことを改善から改革まで引き上げて くれるSierは重宝しています。」という回答も得られました。

以上のことから、DX支援における外部パートナー選びでは、「DX支援の内容がある程度体系化されている」、「伴走してくれる姿勢・コミットメント」という2点がポイントになるのではないでしょうか。

クエストのDX支援

クエストは業務効率化・生産性向上を実現する業務のデジタル化支援をはじめ、本質的なDXを目指すうえで欠かせないデータ活用に必要な環境構築からデータ分析・活用支援まで対応しています。

クエストのDX支援の一覧

業務のデジタル化においては、AIチャットボットやRPA、Microsoft365、リモートワーク環境の導入・環境構築支援を行っています。また、CRM/ERP、SFAなど営業やマーケティング活動に欠かせないツールの導入支援、運用・保守まで対応しています。

データ活用においては、データ収集・データ統合後の工程である、分析から開発・運用・保守のご相談も承っています。また、データエンジニアの派遣に加えて、お客様のデータエンジニア育成のサポートにも対応します。
これらのプロセスを通じて、お客様がデータを実用的に活用し、データ主導のビジネスを推進するためのご支援をします。


クエストは創業58年のシステム会社として豊富な実績があり、技術の探究と創造を大切にしています。また、お客様のDX推進に寄り添い、長期的に伴走できるITパートナーを目指しています。
自社内でも積極的にDX施策に取り組んでおり、業務のデジタル化はもちろん、データ活用、人材育成を実践し、実践で培ったノウハウをお客様に提供しています。


DX推進に課題を抱えておりましたら、是非クエストにご相談ください。