医療DXを支援する「縁Do」をAWSに移行し、コスト削減と柔軟な運用を実現

医療・福祉分野の総合サポートカンパニーとして、36年以上にわたりビジネスを展開してきた株式会社エムアンドエイチ。多くの医療機関が抱える課題の「コスト削減と業務の効率化」を支援するために、多彩なソリューションを提供し続けてきた。
その1つが、診療情報提供書や院内の同意書などを電子化し、デジタルデータの原本に置き換えることを実現する原本化支援システム「縁Do」である。

これまではオンプレミスでの導入のほか、ASPサービスとしても提供されてきた縁Doだが、今回、AWSを導入し、その運用基盤をデータセンターのハウジングサービスからクラウド基盤へと移行させた。AWSへの移行プロジェクトの概要と背景、もたらされた効果について、株式会社エムアンドエイチ 東京本社 営業部 マネージャーの吉田力氏に話を伺った。

【お話を伺った方】
株式会社エムアンドエイチ
東京本社 営業部
マネージャー 吉田力氏

課題と経緯

医療機関の紙文書を電子化し、業務効率化を支援

エムアンドエイチは1986年の創業以来、各種診療情報管理システム、コンサルティングなど、多彩なソリューションやサービスを提供し、医療機関が抱える様々な課題の解決を支援し続けてきた。そうした同社が提供するソリューションの1つが、原本化支援システム「縁Do」である。

多くの医療機関でカルテなどの紙文書の電子化が進んでいるが、他院から持ち込まれる診療情報提供書をはじめ、患者のサインが必要な院内の同意書や説明書など、まだまだ電子化できない紙文書や資料は多い。
当然ながら、そうした紙文書の管理には多大な労苦が伴う。縁Doはそれらの文書や資料を電子化してデジタルデータの原本に置き換えるもの。電子化された文書を保管するだけでなく、それらの情報を院内のどこからでも一元的に参照したり、検索したりすることが可能だ。

「さらに厚生労働省による『医療情報システムの安全管理に関するガイドライン』に準拠する電子署名とタイムスタンプ処理が行えるほか、それらの運用コストについても他社ソリューションよりも安価に提供可能な点が大きな強みです」(吉田氏)。
このような機能性と運用コストを抑制する仕組みが評価され、1,000床を超える大規模病院から、70床ほどの小規模病院まで、規模を問わず、多くの医療機関で採用されている。

縁Doはオンプレミスでの提供のほか、ASPサービスとしても提供されているが、2021年、そのプラットフォームをデータセンターでのハウジングサービスからAWSへと移行した。背景にあったのは、定期的なリプレースに伴うハードウェア導入コストの削減である。

「5~7年のサイクルで定期的にハードウェアのリプレースが発生しており、その都度、多大な投資が必要となっていました。今後もそのような投資を続けるのか、改めて検討する時期を迎えていたのです」(吉田氏)。
実は6年前のリプレース時にも、縁Doのプラットフォームをデータセンターからパブリッククラウドへと移行することを検討していたという。

「しかし、当時は設置場所など、詳細な情報が明言されておらず、医療情報を取り扱うサービスを提供する事業者としては、運用基盤をクラウドに移行することに踏み切れなかったのです」(吉田氏)。
その後、AWSをはじめとして、多くのメガクラウドサービスが日本国内にデータセンターを設置するとともに、国が定める「医療情報システムに関する各ガイドライン」への対応も推進、これらの変化もクラウド化へと舵を切る大きな要因となった。そして2021年より本格的なクラウド化に向けたプロジェクトをスタート、そのパートナーとして選択されたのが、同社の社内インフラの改善案件をサポートしたクエストだった。

クエストがAWS・クラウド以降事例の案内するイメージ

導入

プラットフォームのAWS移行に際して、パートナーにクエストを選択

パートナーとしてクエストを選んだ理由について吉田氏は、「社内インフラの改善プロジェクトを進める中で、クエストとは定期的にミーティングの場を設けていたのですが、こちらからの問い合わせや相談に迅速な回答を寄せてくれたり、親身な対応を図ってくれたりするなど、その対応を評価し、AWSへの移行プロジェクトもクエストに依頼することを決定しました」と説明する。

クラウド化に向けてエムアンドエイチから挙げられた要件は、AWS上に単独の仮想サーバを構築し、その上ですべての病院をサポートするシステムを稼働させるのではなく、1つの病院ごとに1つのシステムを構築するというものだった。
そこで、クエストが注力したポイントが、病院ごとに構築されたシステムの通信がお互いに影響を与えないようにするとともに、シンプルな構成により、容易に横展開が可能な仕組みの実現だった。

そのためにもネットワーク全体の構成をはじめ、VPNのサブネットや、その経路制御を行うRoute Table、さらにはEC2インスタンスなどに適用するファイアウォール機能のセキュリティグループなど、どのレベルで通信制御を行うのか設計段階から検討を重ねた。
最終的には、縁Doを利用する病院が増えた場合にも、お互いの通信に影響を及ぼすことなく、かつ、容易に追加システムを立ち上げられる仕組みを実現できた。

クラウド化を進める中で、クエストから様々な手厚いサポートを受けられたことも大きな評価ポイントだったという。吉田氏は、「定例ミーティングでのやり取りのほか、当社の開発スタッフからの個別の質問や相談にも、都度、クエストから迅速な回答をもらえたことも、スケジュール通りにクラウド化を進められた大きな要因になっていると考えています」と評価する。

「また、医療情報のガイドライン変更に伴いAWS側から新しいリファレンスが提示された際にも、クエストはそれらを取りまとめた資料を都度、提供してくれました。そうしたサポートを受けられたことで、ガイドラインに準拠したお客様にも、説明責任を果たせるクラウド化の実現ができました」(吉田氏)

効果と展望

大幅なコスト削減を達成、より現実に即した事業計画の立案も可能に

今回のAWSへの移行により、定期的に発生したハードウェアのリプレース費用と毎月のハウジング費がなくなり、大幅なコスト削減を実現できたエムアンドエイチ。
また、これまでは高速ではあるが高額なSSDで構築していたストレージも、AWSに移行したことで複数のサービスの中から要件に最も合致したものを選択できるようになったため、より安価な環境の構築が可能になった。
このほか、1ソフトウェア1システムといった形態で運用ができるようになったため、バージョンアップなども容易になるなど、運用面での効果も大きい。

事業推進の観点から、最適な投資が行えるようになったことも大きなメリットだという。「これまでは導入したハードウェアコストに基づき、縁Doの販売目標を定めていました。しかし、必ずしもその見通し通りに事業が進むわけではありません。当然、目標を下回れば、ROI(Return On Investment)は低下します。それに対して、AWSへの移行により1システム1病院という構成が可能となったことで、投資およびリソースの最適化と、より現実に即した事業計画の策定が行えるようになりました」(吉田氏)

今後、エムアンドエイチでは、縁Doのさらなる機能強化を進め、医療機関のデジタル変革をより一層支援していく考えだ。
最後に吉田氏は、「日々、AWSは進化を遂げていますが、引き続きクエストには、当社のビジネスの進化やコスト削減に貢献するようなAWSに関する有益な情報のいち早い提供と、優れた提案を期待しています」と要望を語った。

取材日:2022年5月23日

会社名
株式会社 エムアンドエイチ
設立
1986年(昭和61年)2月
売上高
462,630,270円(2022年1月期)
従業員数
従業員数16人(役員2人 社員14人 ※2022年1月31日時点)
事業内容
カルテ総合管理システムなどの開発・製造・販売・保守
診療情報管理システムの開発・製造・販売・保守