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「昨今のIT化の流れについていけない…でも今後のことを考えると、いよいよ真剣に向き合うべきかも…」
「競合もIT化で業務改善に成功しており、ついていけないと言っている場合ではなくなってきた…」

そのように、IT化について不安を感じられていませんか?

あなたの会社でも、連絡手段としてメールを使うなど、少なからずITツールは取り入れているかと思いますが、それにしてもIT化の流れは早すぎて、順応するのは大変ですよね。

とはいえ、そのようなIT化の流れに取り残されてしまえば、業務効率や生産性の面で他社に差をつけられ、企業の存続すら危ぶまれます。
そうした状況をなんとか打開しようと、業務システムや自動化ツールの導入を考えられているかもしれませんね。

ただ実は、闇雲にそうしたITツールを取り入れても、「IT化についていけない」という状態は変わらないのです。

というのも、あなたの会社がIT化についていけない状況になっていることには、原因があり、以下のように各原因に応じた改善策が必要だからです。

IT化についていけない原因と改善策

売上が芳しくない際には、まず原因を分析し、その原因に応じた改善策を講じますよね。
それと同様、IT化においても、ツールを導入するなどの具体的な行動より、「ついていけない」原因の究明が先なのです。

こうした原因を顧みず、例えば「営業支援システム」を導入したとしても、使いこなせなかったり、そもそも活用されなかったりと、結局状況が好転しない可能性が高いです。
状況が変わらなければ、システムの導入費や利用料も全くの無駄になってしまいます。

そのように、IT化に「ついていく」ための策が徒労に終わらぬよう、この記事では以下の内容をご紹介します。


本記事の内容
  • IT化についていけない状況の原因について
  • 原因別の改善策
  • 改善策実施後のIT化の進め方
  • IT化を進めて成果を出すためのポイント



自社がIT化についていけないという状況になっている原因と、原因ごとの改善策がわかる内容となっています。

さらには、改善策を実施した後に、IT化に向けてどう動くべきかも解説していますので、ぜひ最後まで目を通してみてくださいね。

1. IT化についていけないと感じる企業がまずやるべきことは原因の把握

1. IT化についていけないと感じる企業がまずやるべきことは原因の把握

冒頭でもお伝えしたように、自社がIT化についていけていないと感じるのであれば、まずはそうした状況を作り出している原因を把握する必要があります。

原因を解消する策を講じた上でIT化(システムやツール導入による業務改善)を進めなければ、状況は好転しづらいからです。

そこでまずは、あなたの会社が以下の3パターンのうち、どの原因によってIT化の波に乗り遅れてしまっているのかを明らかにしておきましょう。

IT化についていけない原因3パターン
  • アナログで業務を行う習慣根付いている
  • 従業員がIT化の影響を正しく認識していない
  • ITに関する知識が不足している


各原因について、もう少し詳しく説明しますね。

1-1. アナログで業務を行う習慣が根付いている

アナログで業務を行う習慣が根付いていることは、企業がIT化についていけない状態を作り出してしまいます。

業務プロセスがアナログであっても、それが慣れ親しんだものであれば、非効率であることに気付かず、変えることにも抵抗を覚えるからです。

こうした原因によってIT化についていけなくなっている企業は、以下のようなケースに当てはまることが多いです。



この原因に当てはまると判断すべき状況
  • IT化に限らず、これまでも業務の進め方を変えることへの反発があった
  • 業界全体でアナログな業務プロセスや習慣が一般的
  • 職人気質の従業員が多い



このような状況のまま新たにツールやシステムを導入しても、利用されることなく、アナログな業務の進め方を変えられない可能性が高いです。

そういった事態を回避するためには、現状の業務プロセスの課題に気付かせ、「改善させよう」という意識を社内で醸成しなければなりません。

詳しい方法については、「2-1.【アナログで業務を行う習慣が根付いている場合の改善策】業務プロセス改善の意識を醸成する」で解説するので、ぜひ読み進めてみてくださいね。

1-2. 従業員がIT化の影響を正しく認識していない

従業員がIT化の影響を正しく認識していないことも、企業がIT化についていけない状況を作り出してしまいます。

ここで言う「IT化の影響の正しい認識」とは、「IT化が、個々の従業員に与える影響」のことです。
業務効率化や生産性向上といった、会社への影響を認識している従業員は多いかもしれませんが、自分自身にどう影響があるのかは、意外と気付きにくいものです。

このような、IT化が個々の従業員に与える影響が認識されていないと、従業員に当事者意識やIT化へのモチベーションが生まれないのです。

こうした原因によってIT化についていけなくなっている場合、社内で以下のような状況が見られるはずです。

この原因に当てはまると判断すべき状況
  • ITツールやシステムを導入したことはあるが、使われたり使われなかったりする
  • IT化に限らず、新たな施策の実施時に従業員が受け身な姿勢になりがち
  • トップダウン型の経営体制


このような状況のまま新たにITツールやシステムを導入しても、ツールやシステムの導入が自分ごとにならず、積極的に使い方を習得してもらえない可能性が高いです。
結果的に、いつまで経っても適切にツールを使えず、肝心の効率化が実現しづらくなってしまいます。

そういった事態を回避するには、各従業員にIT化に対する当事者意識を持ってもらうことが重要です。

具体的な方法については、「2-2.【従業員がIT化の影響を正しく認識していない場合の改善策】当事者意識を持たせる」で解説しますので、ぜひ読み進めてみてください。

1-3. ITに関する知識が不足している

ITに関する知識が会社全体で不足している、つまりITリテラシーが低いことは、企業がIT化についていけない状態を作り出してしまいます。

ITリテラシーが低い人にとっては、ツールやシステムを使いこなすのが難しいからです。
また、使い方をネットで調べるにしても、「デバイス」とか「サインアップ」といった用語に対する知識が追いついていなければ、使い方がイマイチわからないままになってしまいます。

こうした原因に当てはまる場合、社内で以下のような状況が見られるはずです。

この原因に当てはまると判断すべき状況
  • 「クラウド」などの基本的なIT用語が伝わらないことがある
  • 「アカウントを作成して」などの基本的な指示が伝わらないことがある
  • すでに使いこなせていないツールがある
    (Web会議ツール、チャットツール、Excel、パソコン、タブレットなど)
  • ログイン情報が記載された付箋が机上に貼ってある


このような状況で、新しいシステムやツールを導入しても、使いこなせず導入費や利用料が無駄になる可能性が高いです。
そればかりか、使い方を誤って、業務効率の悪化や情報漏えいにつながるリスクもあります。

このように、ITに関する知識不足が原因でIT化についていけていないのであれば、全社をあげてITリテラシーを底上げすることが必要です。

詳しい方法については「2-3.【IT化に関する知識が不足している場合の改善策】全社的に基礎的なITリテラシーを獲得する」で解説しているので、そちらを参考に、早速改善策を講じていきましょう。

2. 【原因別】IT化についていけない状況の改善策

【原因別】IT化についていけない状況の改善策

IT化についていけない状態を作り出す原因がどのようなものかわかったところで、次は、その改善方法についてご紹介したいと思います。

各原因に応じた改善策は、以下の通りです。

IT化についていけない状況の改善策

・アナログで業務を行う習慣が根付いている場合

 ▶︎業務プロセス改善の意識を醸成する

・従業員がIT化の影響を正しく認識していない場合

 ▶︎当事者意識を持たせる

・IT化に関する知識が不足している場合

 ▶︎全社的に基礎的なITリテラシーを獲得する



こうした改善策を実施することで、「IT化についていけない」原因を解消することができます。

具体的にITツールやシステムを導入する前に、まずはこれらの改善策を実施してIT化の土台を整えておきましょう。

2-1.【アナログで業務を行う習慣が根付いている場合の改善策】業務プロセス改善の意識を醸成する

アナログで業務を行う習慣が根付いているという原因は、業務プロセス改善の意識を醸成することで解消されます。

その具体的な方法は以下のようなものです。

1.業務プロセスごとに課題を洗い出す
2.課題への危機感を持たせる
3.理想を明確に提示する


それぞれ、どのようなことをするのか詳しく説明しますね。

2-1-1. 業務プロセスごとに課題を洗い出す

まずは、社内の主要な業務プロセスごとに課題を洗い出し、顕在化させます。

アナログな業務の進め方が根付き、当然のことになっていると、そもそも課題があることに気付きづらく、当然改善しようという意識も生まれません。

アナログな業務の進め方が根付き、当然のことになっていると、そもそも課題があることに気付かない

例えば、建築会社の資材発注業務を、現場監督が事務所に戻ってFAXで行う企業もあるでしょう。
でも、わざわざ帰社せず、現場でタブレットから行えるのなら、その方が圧倒的に効率的ですよね。

ただ、FAXによる発注しか経験したことがなければ、そもそもそれが非効率的なことだと気付きにくく、改善したいという発想にはならないのです。

こうした状態を脱するため、まずは業務プロセス上の課題の存在を従業員に気付かせなければならないのです。

2-1-2. 課題への危機感を持たせる

業務プロセス上の課題を明らかにしたら、次は、課題に対する危機感を従業員に持たせましょう。

このことで、
「課題があっても仕事は回っているから、まあ良いか」
 ↓
「課題を放置しておくと大変なことになる!何とかしないと!」
という意識の変化が起こります。

危機感を持つことができれば、改善したいという意識も醸成しやすくなるので、課題を放置することの危険性をしっかり従業員に説明しましょう。

その際、以下のポイントに気を付けてみてください。

課題への危機感を持たせるためのポイント

・最悪のシナリオを示す
▶︎課題を放置することで起こり得る最悪の事態を示す。事業縮小による減給、リストラなど、従業員への直接的な影響も交えて説明すると尚良い。

・経営者自ら説明する
▶︎経営者が直接メッセージを伝えることで、「ただごとではない」という意識が芽生える。


・社外の状況も合わせて説明する

▶︎市場や競合の状況も説明し、その中で課題を放置することがいかに危険か説明する。

2-1-3. 理想を明確に提示する

危機感を持たせると同時に、目指すべき理想の状態も明確に従業員に示しておきます。

この時、理想の状態をできるだけ明確にしておくことで、理想と現状のギャップが明らかになり、改善に向けた高い意識が醸成されやすくなります。

例えば、以下の2つを見比べてみてください。

 A「生産ラインの作業効率を向上させたい」
 B「生産ラインの作業効率を10%向上させて、月の売上+500万円、そのために生産数+2,000を目指す」

Aのような漠然としたビジョンより、Bのような数値目標を伴う明確な理想像を示される方が、高い目的意識を持って、業務改善に臨めるようになると思いませんか?

また、こうした明確な理想を示された方が、「業務の進め方を変えざるを得ない」ということも納得しやすく、ITツール・システムの導入も受け入れられやすくなるはずです。

このように、明確な理想を示すことで改善へ向けた意識を高め、この先のIT化推進への布石を打っておきましょう。

2-2.【従業員がIT化の影響を正しく認識していない場合の改善策】当事者意識を持たせる

従業員がIT化の影響を正しく認識していないという原因を解消するには、IT化に対して当事者意識を持たせることが効果的です。

その具体的な方法は以下のようなものです。

1.経営陣からIT化の目的を説明する
2.部署内でIT化による利点を洗い出す
3.ITツール・システムを提案してもらう


それぞれの工程について、詳しく説明しますね。

2-2-1. 経営陣からIT化の目的を説明する

まずは、経営陣からIT化を推進することや、その目的を説明します。

最終的にはIT化に対して、「自分にも必要なことなのだ」という当事者意識を持ってもらうことを目指しますが、その前に「そもそも会社にとって必要なことだ」と納得してもらう必要があります。

そのために、最低限以下のことを説明しておきましょう。


  • どのような業務課題があるのか
  • なぜ課題を解決する必要があるのか
  • 課題を解決し、どのような状態を目指すのか
  • そのために、なぜIT化(ITツール・システム)が必要なのか


こういったことを伝えることで、自社がなぜIT化を進めるのかということを納得してもらいやすくなるはずです。

2-2-2. 部署内でIT化による利点を洗い出す

会社としての目的を伝えられたら、ITツール・システムを導入予定の部署内で、導入によって得られる利点を洗い出してもらいます。

ここでは、企業としての利点ではなく、以下のような従業員個々の利点に着目し、検討してもらいましょう

IT化による従業員の利点(一例)
  • 効率的に業務を進めることで残業が減り、余暇を楽しめる
  • より生産的な業務に時間を割けて、自身の成績向上や給与アップにつながる
  • 手作業が減ることでミスも減り、クレームを受けることもなくなる
など


これにより、上から提示された利点ではなく、従業員自身が本当に利点だと思えることを自ら考えることができ、IT化が自分ごとになっていきます。

この時、部署内でのミーティングが設けられるかと思いますが、ミーティングにおいては、一人一人に発言する機会を与えるようにしてみてください。

発言の機会があることで、より自分ごと化して考えてもらいやすくなるはずです。

2-2-3. ITツール・システムを提案してもらう

自ら利点を考えてもらうだけでもある程度の当事者意識は芽生えるはずですが、さらに導入するITツールやシステムを従業員から提案してもらうことで、その意識を強化していきましょう。

各従業員にツールやシステムをリサーチ・提案してもらうことで、「自分もIT化を進める一員だ」という意識を持ってもらえるはずです。
できるだけ部署内の全員が関わる形で、従業員自身が使ってみたいもの・使えそうなものを提案してもらいましょう。

これにより、当事者意識が強化されることに加え、従業員の意向を汲んだ形でツール・システム選定を行えるので、導入後も高いモチベーションの下で使い方を習得してくれるはずです。

2-3.【IT化に関する知識が不足している場合の改善策】全社的に基礎的なITリテラシーを獲得する

IT化に関する知識が不足しているという原因は、全社的に基礎的なITリテラシーを獲得することで解消できます。

その具体的な方法は、以下の通りです。

1.現状のITリテラシーレベルをチェックする
2.現状に応じて学習を進める
3.基礎的なITリテラシーを獲得できたか確認する



それぞれの工程について、もう少し詳しく見ていきましょう。

2-3-1. 現状のITリテラシーレベルをチェックする

まずは、現時点で社内のITリテラシーレベルがどれくらいかチェックしてみてください。

現状のITリテラシーが、入門レベルなのか、基礎レベルまであと一歩のところなのかによって、この後どのように学習を進めるべきか変わってくるため、現状把握は重要です。

ITリテラシーレベルのチェックには、以下のようなものが役立ちます。


P検(5級)
初心者向けの無料テストで、コンピューター知識、情報通信ネットワーク、情報モラルと情報セキュリティについて、それぞれ10問ずつ、計30問が出題。
60点以上なら合格ラインで、入門レベルはクリアしていると判断できる。

ITリテラシーチェック
有料のITリテラシーチェックサービス。パソコンの使い方やコンピューターの仕組み、日常的に使用するOfficeやインターネットツールなどについて、計133問(自己評価+テスト)の設問を出題。
実施後は、個人レポート及び総合レポートで現状のITリテラシーレベルを可視化できる。



こうしたテストやサービスを活用して、自社のITリテラシーレベルを把握しておきましょう。

2-3-2. 現状に応じて学習を進める

自社のITリテラシーレベルを把握できたら、そのレベルに応じて学習を進めます。

ここで重要なのは、ITリテラシーレベルに応じて適切な学習方法を選択することです。
レベルに応じたやり方で学習を進めなければ、効果が得られなかったり、余計なコスト・時間をかけることになってしまうからです。

例えば、入門レベルにも満たない従業員が大半の企業で、eラーニングを実施しても、そもそもeラーニングを使いこなせないという事態が発生しかねません。

また逆に、基礎レベルまであと一歩の状態の組織では、講師を招いて長時間講習を行うような学習方法は、投じるコストと時間が過剰気味と言えます。

こういった状況に陥らないように、以下を参考に、現状のレベルに合った学習方法を選択するようにしてください。


【各ITリテラシーレベルに合った学習方法】

入門レベル未満
(P検5級不合格ライン)
セミナー(対面)、ITリテラシーの高い従業員による講習

入門レベルクリア
(P検5級合格ライン)

eラーニング

基礎レベル手前
(P検5級90点ライン)

書籍、Web上の情報による自学自習



同じ組織内でも従業員によってレベルが異なるはずなので、レベルごとに異なる学習方法を推奨したり、層の厚いレベルに合わせて学習方法を判断するなどの対応も検討してみてくださいね。

2-3-3. 基礎的なITリテラシーを獲得できたか確認する

社内での学習がひと段落したら、基礎的なITリテラシーを獲得できたかどうか確認します。

基礎的なITリテラシーとは、各従業員がITツール・システムを活用しながら業務を遂行できる程度を指します。
このレベルのITリテラシーが社内に行き渡っていれば、今後のIT化もグッと進めやすくなるはずです。

そのような基礎的なITリテラシーを獲得できているか確認する方法としては、先ほどからご紹介しているP検の3級受験がおすすめです。
P検の実施団体では、3級合格者の人物像を以下の通り想定しているからです。

【P検3級合格者の人物像:入社時に要求されるICT活用スキルを有する人材】


・基本的なICT(情報通信技術)活用による職務の遂行と問題解決が、人を頼らずにできる
・基本的なICT知識・スキルを有する

例えば…
・ネット上で収集した市場動向の情報と、自社の営業実績を関連づけ、表やグラフを組み合わせてビジュアル化できる
・適切なWebサイトからドライバーのインストールを行い、プリンターを設定できる
・ファイルの検索性を考慮したフォルダーの階層構造を作ることができる

参考:P検-ICTプロフィシエンシー検定協会「人物像・シーンマップ 」


こうした人物像にあるような、プリンターの設定やExcel等による簡単な集計がままならないようでは、新しいITツールを導入しても使いこなせず、IT化は進みません。

簡単なITツールならスムーズに使えるように、P検3級レベルの基礎的なITリテラシーは身に付けてもらうようにしましょう。

ITリテラシーの習得度合いを確認する方法としては、P検の他にも、例えば学習に利用したeラーニングでスキルチェックを行ってくれるようなサービスがあれば、そちらを活用するのもおすすめです。

3. 改善策実施後のIT化を進める5ステップ

改善策実施後のIT化を進める5ステップ

ご紹介した改善策を実施することで、IT化を進めていくための土台が整うはずです。
ここまで来たら、いよいよ具体的ITツール・システムの導入に向けて動き出しましょう。
その際は、以下のステップに沿って進めていくとスムーズです。

【IT化を進める5ステップ】

STEP.1

解決すべき業務課題を決める
STEP.2 目的を設定する
STEP.3 ITツール・システムを選定する
STEP.4 運用を開始する
STEP.5 効果を確認する



各ステップについて、詳しく見ていきましょう。

3-1. 解決すべき業務課題を決める

まず、IT化によって優先的に解決すべき業務課題を決めます。

業務課題は、洗い出せばいくつも出てくるはずですが、一つのITツールで全てを解決できるわけではありません
このため、まずは優先的に解決したい業務課題を決める必要があるのです。

どの課題を優先すべきかは、以下のような観点を考慮して決めるようにしましょう。

優先すべき業務課題を決める際に考慮すること

・費用対効果
…コストを抑えて改善できそうな課題を優先

・業務に関わる従業員の多さ
…関わる従業員が少ないものを優先

・収益への影響の大きさ
…収益への影響が大きい課題を優先

・取引先への影響の有無
…ITツールを導入しても取引先に影響が無いもの、または好影響を与えるものを優先

・従業員の希望
…従業員の方から改善の希望があるものを優先



本格的なIT化推進が初めての場合は、これらのうち、特に「費用対効果」と「業務に関わる従業員の多さ」を重視し、コストも規模も小さく解決できそうな課題を優先させてください。

スモールスタートでリスクを抑えて、着実な一歩を踏み出すことを目指しましょう。

3-2. 目的を設定する

続いて、IT化の目的を設定します。

IT化によって目指すゴール(=目的)を設定しておくことで、関係部署の従業員も目的意識を持ってツールやシステムを活用してくれやすくなります。

そのために、以下のように、課題から目的を明確にしてみてください。

目的の設定例

課題:顧客情報の共有ができておらず、担当者が不在だと全く対応できない

目的:顧客情報を一元管理し、担当者が不在の場合でも簡単な対応が可能な体制を築き、顧客満足度の向上に繋げる

課題:オフィスでしか事務仕事を行えず、無駄な移動時間・費用が発生している

目的:現場でも事務作業を行えるデバイスを導入して現場作業員の残業時間・残業代・移動コストを◯%削減する



このように、目的設定をする際は、「顧客情報を一元管理」「現場でも事務作業を行えるデバイスを導入」など、大まかな解決策まで検討しておくと、この後のツール選定もスムーズに行えます。
とはいえ、どう解決すべきか見当がつかなかったり、どの解決方法がベストか判断しづらいということもあるかと思います。

その場合は、IT化の支援会社に相談してみるのもおすすめです。課題がはっきりしているのであれば、ベストな解決策を提案し、ITツールの選定〜運用までサポートしてくれますよ。

3-3. ITツール・システムを選定する

目的が定まったら、導入すべきITツールやシステムを選定します。

課題や目的から必要なツール・システムに見当をつけ、導入するものを選びましょう。

候補となるツール・システムは複数挙がるかと思いますので、その際は以下のポイントで絞り込んでみてください。

選ぶべきITツール・システムの選定ポイント

・無料 or 少額で試せるもの
…使用感を試した上で本格導入できる

・小規模に導入できるもの
…スモールスタートでリスクを抑えられる

・クラウドサービス
…初期費用が不要な場合も多く、基本的に月額制なので合わない時は中断できる

・担当者の対応がわかりやすい
…トラブルや質問がある時に頼れる

・セキュリティ面に配慮されている
…利用者や利用端末を制限、BYODのセキュリティリスク対策、不正アクセスやマルウエア、標的型攻撃などといったサイバー攻撃に備えた、基本となるセキュリティ対策ができている
※自社で高度なセキュリティ対策を検討するのは難しいため、IT化の支援会社に相談してみるのもおすすめ



まずは、このようにリスクを抑えて導入できるツールやシステムを選ぶと良いですよ。

3-4. 運用を開始する

ITツール・システムを選定できたら、実際に導入し、運用を開始します。

この時、「導入したから使ってください」というだけでは、適切な使われ方はされませんし、そもそも誰も利用しない可能性もあります。

そのようなことにならないために、運用を開始するにあたって、会社側から以下のことを必ず実施するようにしてください。

ITツール・システムの運用にあたり会社が実施すべきこと

・利用ルール策定
…どのように利用するかルールを決める

・マニュアル作成(共有)
…使い方のマニュアルを作成する。ツールの提供会社側でマニュアルが作成されている場合は、共有する。

・説明会
…利用ルールを周知させたり、マニュアルを元に使い方を説明する。業務プロセスの変更点についても周知させる。

・問い合わせ先の明示
…トラブルや質問があった際の相談先を知らせておく。


導入したツールやシステムが適切に使われるように、こういった対応は怠らないようにしましょう。

3-5. 効果を確認する

ITツール・システムの運用開始後、従業員がスムーズに活用できるようになってきたら、効果を確認してみましょう。

もし効果が出ていないようなら、ツールの使い方やツールそのものを見直す必要があるため、具体的な数字に基づいて効果を測定します。

IT化に取り組んでいる業務内容によって効果の測定方法はさまざまですが、もしどのように測定すべきか悩まれるようなら、以下を参考にしてみてください。

IT化の効果測定方法

・前年のデータと比べる
…コストや労働時間、労働生産性を前年(あるいは平均値)と比べてみる

※基本的な労働生産性の算出方法
労働生産性=生産量(額)÷ 労働投入量(労働時間・人数)
(参考:公益財団法人 日本生産性本部 生産性とは

・目的に対して達成度を測る
…目的設定のステップで決めておいた目標数値に対して何%達成されているか算出する



効果測定の結果、効果が出ていることが確認できたら、ツールを他の業務にも流用したり、他の業務課題の改善にも取り組んだりと、IT化の範囲を拡大させていきましょう。

4. IT化についていけていない企業が着実に成果を出すためのポイント

IT化についていけていない企業が着実に成果を出すためのポイント

IT化はご紹介したような手順で進めることができますが、今まで「IT化についていけない」と悩んできた企業が着実に成果を出すには、いくつか気を付けるべきポイントがあります。

それが以下の4点です。

IT化で成果を出すためのポイント
  • スモールスタートを切る
  • クラウドサービスを活用する
  • 業界事例を把握する
  • 支援サービスを利用する



1つずつ説明しますね。

4-1. スモールスタートを切る

IT化は、スモールスタートを切って、リスクを抑えながら進めましょう。

これまで「ついていけない」と感じていたIT化は、あなたの会社にとって新しい取り組みであるはずです。
そのような新しい取り組みを始める際は、IT化に限らず、まず小規模に進めるのが鉄則です。

例えば社外で事務作業を行うためのタブレットやノートパソコンが必要なら、まずは1〜2台から、営業の業務プロセスに課題があるなら、まずは営業部の◯課から、というようにコストや規模を小さく始めるようにしてください。

このことで、もし導入したツールやシステムが合わなくても柔軟に方向転換ができるため、効果を追求しやすくなります。

4-2. クラウドサービスを活用する

物理的な機器類ではなく、システムを導入する場合は、クラウドサービスを活用しましょう。

クラウドサービスとは
インターネット経由で利用できるサービス(システム)のこと。
自社のサーバーなどでシステムを管理・運用するわけではないため、初期費用が不要(もしくは少額)で利用できる。
月額利用料は発生するが、システムの保守・管理は提供会社側で行ってくれる。



このようなクラウドサービスを活用することには、以下のようなメリットがあります。


クラウドサービスを利用するメリット
  • 初期費用が不要(少額)なのでスモールスタートが切れる
  • 社内にシステムを構築するわけではないので、柔軟に利用を中断できる
  • 無料トライアル可能なサービスが多い
  • 毎月少額コストで利用が可能な月額定額定額制や、アカウント数や容量に応じた従量課金制であることも多く、必要最低限の利用料で済む



こうしたメリットにより、自社に本当に合ったシステムを選びやすくなり、リスクも抑えながら運用を開始できるのです。

4-3. 業界事例を把握する

IT化を進めるにあたり、自社と同じ業界のIT化事例についてリサーチしておきましょう。
IT化に限らず、新たな取り組みで効果を出すために、先行事例を知っておくことは重要です。

他社のIT化事例について、

  • どのような業務を、どのようなツールで改善したのか
  • 具体的な効果はどれくらいだったのか



というポイントを参考にしつつ、自社でも効果が出やすい形でIT化を実践していきましょう。

4-4. 支援サービスを利用する

自社だけでIT化に取り組むのが不安な場合は、IT化をサポートしてくれるサービスを利用するのも一つの手です。

本格的なIT化に取り組むのが初めての場合、自社だけで目的を設定したり、ツール・システムを選定することに不安を感じることもあるかと思います。


それなら、プロによるサポートを受けながらIT化を進めるのがおすすめです。
各種ITソリューションの導入を支援する企業のサービスを利用することで、より着実にIT化による効果が期待できます。


そのように、自社のIT化に伴走する協力会社をお探しなら、ぜひ一度当社クエストへご相談ください。
クエストは業務効率化・生産性向上を実現する業務のデジタル化支援をはじめ、本質的なDXを目指すうえで欠かせないデータ活用に必要な環境構築からデータ分析・活用支援まで対応しています。


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5. まとめ

IT化についていけない原因と、その改善策はおわかりになったでしょうか。

最後に今回の内容をまとめておきます。

自社がIT化についていけない状況になっていることには、以下のような原因があります。

IT化についていけない原因3パターン
  • アナログで業務を行う習慣が根付いている
  • 従業員がIT化の影響を正しく認識していない
  • ITに関する知識が不足している



これらの原因ごとの改善策は次の通りです。

IT化についていけない状況の改善策

・アナログで業務を行う習慣が根付いている場合
▶︎業務プロセス改善の意識を醸成する

・従業員がIT化の影響を正しく認識していない場合
▶︎当事者意識を持たせる

・IT化に関する知識が不足している場合
▶︎全社的に基礎的なITリテラシーを獲得する



こうした改善策を講じることで、IT化を進めるための土台が整います。
その後は、以下のようなステップでIT化を進めていきましょう。

【IT化を進める5ステップ】

STEP.1 解決すべき業務課題を決める
STEP.2 目的を設定する
STEP.3 ITツール・システムを選定する
STEP.4 運用を開始する
STEP.5 効果を確認する



IT化を進めるにあたっては、以下のポイントに気を付けることで、成果を出しやすくなります。

IT化で成果を出すためのポイント
  • スモールスタートを切る
  • クラウドサービスを活用する
  • 業界事例を把握する
  • 支援サービスを利用する



本記事の内容が、今後スムーズにIT化を進めるための助けとなれば幸いです。