目次

「業界問わずDXが進められているけど、IT化じゃだめなの?そもそもIT化との違いは何?」
「自社で業務プロセスのIT化を進める計画はあるけど、これってDXとは違うのだろうか?」


そのように、DXとIT化の違いについて疑問をお持ちではありませんか?


結局どちらもデジタル技術を活用することには変わりないため、何がどう違うのかわからないというのは当然のことと思います。


ただ、結論からお伝えすると、DXとIT化では実施する目的が大きく異なります
DXが、「ビジネスに変革を起こして競争優位性を確立すること」を目的としているのに対し、IT化は「業務の効率化」を目的とした取り組みなのです。

DXとIT化では実施する目的を説明する図版

目的が異なるため、どちらを実施すべきかは自社の課題によって違ってきます

例えば、建築会社において、


「事務作業を行うために、現場監督が帰社する必要があり、そのための時間・コストがムダになっている。さらに現場を離れている間の作業効率も良くない。」


という課題の解決を目指すなら、取り組むべきは、業務の効率化が目的であるIT化です。逆に、現状ではDXは不要な取り組みと言えます。


このように、一種の流行のように取り沙汰されていますが、DXは必ずしもあなたの会社にとって必要なものとは限らないのです。


にも関わらず、DXとIT化それぞれの実態を理解しないまま、「とりあえずみんなやっているから」とDXに取り組もうとするのは危険です。
不必要にビジネスモデルを変革することで、顧客が離れてしまったり、従業員が流出したり、と逆に企業存続を脅かす事態になりかねません。


そうした事態を回避し、自社課題を解決に導くためには、DXとIT化の違いを明確に理解し、本当に必要な取り組みを判断する必要があります。


その一助となるよう、この記事では以下の内容をご紹介します。



本記事の内容
  • DXとIT化の目的の違い
  • DXとIT化の取り組み方の違い
  • DXとIT化の関係性
  • DXとIT化それぞれの事例
  • DXに取り組むべきケースとIT化に取り組むべきケース



DXとIT化の違いが明確に理解でき、自社にとって有用なのはどちらか判断できる内容となっています。


ぜひ最後まで目を通してみてくださいね。

1. DXとIT化の大きな違いは目的にある

DXとIT化の目的のイメージ画像

冒頭でもお伝えしましたが、DXとIT化の最大の違いは、それぞれの目的にあります。


その違いをより詳しく把握していただくために、まずはDXとIT化それぞれの定義を確認した上で、目的の違いを改めて説明しますね。

1-1. DXとは

DXの定義は、文脈や情報元によりさまざまですが、ここではよく参考にされる経済産業省による定義をご紹介します。


DXの定義

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。


出典:経済産業省「DX推進指標」



こちらを見ればわかるように、DXで目指すこと(=目的)は、「ビジネスに変革を起こして競争優位性を確立すること」です。

そしてそのための手段として用いられるのが、データやデジタル技術です。

こういったことから、DXとは例えば以下のような取り組みと言えます。


【工場ごとに異なる商品を製造し、販売店に卸している家具メーカーの例】

生産管理システムや機器の制御システムを全工場で統一・連携し、部品ごとの図面データも全社で共有。
(各工場が別の工場で担当していた商品や部品を柔軟に製造できるようになる)

商品・部品の柔軟な組み合わせが可能になったことで、従来の大量生産だけでなく、多品種少量生産にも対応可能に。

オーダー用のアプリを通じたセミオーダーメイドサービスをリリース。
従来のBtoBのビジネスモデルからDtoCの新たなビジネスモデルが確立される。


DXは、このようなビジネスの変革を前提とした取り組みであることを抑えておきましょう。

1-2. IT化とは

IT化とは、一般的に「ITやデジタル技術の活用によって、業務プロセスを効率化すること」です。


つまり、IT化の目的は平たく言えば「業務の効率化」です。
そのための手段として、IT(情報技術)やデジタル技術を用います。


例を挙げるなら、以下のような取り組みがIT化に当たります。

  • 打ち合わせの際の移動時間やコストを削減するためWeb会議ツールを導入する
  • 営業効率を上げるため、コーポレートサイトの問い合わせフォームとWeb広告を活用する
  • 売上管理業務を効率化するため、会計システムを導入する


このようにIT化は、ビジネスを支える業務を、より迅速に、より小さなコスト・労力で遂行するための取り組みであることを押さえておきましょう。

1-3. DXとIT化の目的の違い

ご紹介した通り、DXとIT化ではそもそも目的が異なります。


目指すべきゴールが違うため、取り組み方にも違いが出てきます。


ここで、改めて両者の目的を見比べてみましょう。

【DXの目的】

 ビジネスに変革を起こして競争優位性を確立すること

【IT化の目的】

 業務の効率化



このようにDXは、市場の中で優位な立場を築くことを目的としている以上、ビジネスモデルの変容や、新規事業の創出を伴う全社的な取り組みとなります。


一方でIT化は、業務の進め方に焦点を当てた取り組みであるため、基本的にはDXとは違い、ビジネスの根本的なあり方にまでは変化を及ぼしません
部署ごと・拠点ごとにスモールスタートすることも可能です。


このように、DXとIT化では、そもそも目的が異なるため、実施後の企業のあり方や、取り組みの過程・規模などにも違いが見られるのです。

2. DXとIT化で大きく違う取り組み方

「DXとIT化で大きく違う取り組み方」の章のイメージ画像

お伝えしたように、そもそも目的の異なるDXとIT化では、取り組み方においてもさまざまな違いが見られます。


以下はその違いを大まかにまとめたものです。


【DXとIT化の取り組み方の違い】
違い DX IT化
規模 全社 部署/チーム単位から可能
期間 長期 短期でも可能
コスト 大きな投資が必 少額から可能
実施後の変化 ・ビジネスモデルの変容
・新規事業の創出
業務の時間短縮/省人化



こうした違いをイメージしやすくするため、DX/IT化の取り組み方について、例を用いて説明しますね。

2-1. IT化の取り組み方

例えばアパレル小売の企業が、「顧客の声をもとに商品を改良するプロセス」の効率化を目指してIT化に取り組んだとします。


すると、例えば次のような取り組みや変化が見られるはずです。


IT化の取り組み・変化例

【取り組み】

 顧客の声を収集・集計するためのWebアンケートシステムを導入

【変化】

 既存のプロセス
  会計後にアンケート用紙に記入してもらう
  →収集(手作業)
  →集計(表計算ソフトに手入力)
  →集計結果をもとに議論・商品の改良

 IT化実施後のプロセス
  レシートに印刷されたQRコードからWeb上でアンケートに回答してもらう
  →収集・集計(システムにより自動化)
  →集計結果をもとに議論・商品の改良



こうした取り組みは、主にアンケートの収集・集計を担ってきたチームの業務効率を改善するものですから、店舗スタッフ・マーケティング部などを中心とした部分的なものと言えます。


また、具体的な取り組みは、「Webアンケートシステムの導入」であるため、何年もかかるプロジェクトではありませんよね。必要なコストもシステムの導入費や利用料のみです。


そして実施後は、アンケートの収集・集計が自動化されるため、業務の時間短縮・省人化が叶ったことになります。


これらのポイントを念頭に、次はDXの取り組み方についても見てみましょう。

2-2. DXの取り組み方

より違いをわかりやすくするため、DXの取り組み方もアパレル小売の企業を例に説明しますね。


実店舗での商品販売が主な収入源だった企業が、オンライン専用ブランドの立ち上げにより、競合との差別化を図ることを目的にDXを実施した場合について考えてみましょう。


DXの取り組み・変化例

【取り組み】

  • 実店舗へのAIカメラ導入により、顧客層ごとに関心度や購買結果を分析
  • 分析結果にもとづいて、顧客層別にオンライン専用ブランドを立ち上げ
    (実店舗の運営費がかからない利点を活かしてブランドを細分化)

  • ブランドごとにオンラインショップを開業


【変化】

  • 既存のビジネスモデル:
    実店舗を中心に商品を販売。収入源のほとんどが実店舗経由。

  • DX実施後のビジネスモデル:
    実店舗で顧客層ごとの嗜好をデータ化・分析。その結果をオンライン専用ブランドの商品に反映させることで、顧客ニーズに細やかに応えるブランドが実現。
    オンラインショップの収益が実店舗と同規模に拡大。



こうした取り組みは、企業の根本的なあり方に関わるものであり、実店舗スタッフから生産管理部などのバックオフィスまで巻き込んだ全社的な取り組みとなるはずです。


また、オンラインに軸足を置いた新事業の立ち上げとも言える取り組みを実施し、その事業を成長させるには数年スパンの期間を要することでしょう。


必要なコストも、AIカメラの導入費や利用料のみならず、新ブランドを立ち上げ、運営するための投資が少なからず必要になってきます。


このような取り組みは、「顧客のニーズに細やかに応える」という点で競合との差別化を実現させ、収益構造にも大きな変化を与え得るのです。


このように、同じ業態の企業がDX/IT化を実施した場合の取り組み方を比べてみると、両者の違いがイメージしやすくなるのではないでしょうか。

3. DXとIT化の関係性

DXとIT化の関係性についてのイメージ画像

ここまでで、DXとIT化の違いが大まかにおわかりになったかと思います。


とはいえ、両者は全く関係性のない取り組みというわけではありません。
DXを進める上で、ある程度のIT化は必須なのです。


というのも、DXは先述の通り「データとデジタル技術」を活用した取り組みであり、企業の持つ情報がデータとして創出・保管されている状態が前提となっているからです。

DXを進める上で、ある程度のIT化は必須であることを示す図版

例えば、先ほど例に出したアパレル企業のDXについて再度考えてみましょう。
具体的な取り組み例の一つとして、


「実店舗へのAIカメラ導入により、顧客層ごとに関心度や購買結果を分析」


を挙げましたが、これはただAIカメラさえ導入すれば良いということではありません。


AIカメラのシステムが、顧客の行動から顧客の関心や購買傾向を分析するには、例えば以下のような前提が必要です。


  • 自社商品の情報がデータとして保管されている
  • 販売情報がデータとして記録・集計されるPOSが導入されている



こうした前提により、AIカメラのシステムが扱える形(データ)で情報が保管されているからこそ、「どのような顧客が、どの商品を手に取り、実際何を購入したか」という分析が可能となるのです。

IT化の土台の上にDXが成り立つという関係性を示す図版

逆に、紙の商品一覧表を使っていたり、町の商店のようにただ金銭の授受が行われるだけであったりと、IT化が全く進んでいないと、AIカメラが分析に用いるデータが存在しません。
そのような状態でAIカメラだけ導入しても、少し性能の高い防犯カメラとしてしか機能しないはずです。


このように、IT化とDXは異なる取り組みでありながら、IT化の土台の上にDXが成り立つという関係性であることは覚えておきましょう。

4. 事例にみるDXとIT化の違い

「事例にみるDXとIT化の違い」のイメージ画像

ここまで、DXとIT化にどのような違いがあり、互いがどう関係しているかを説明してきました。


ただ、実際の事例を見ないことには、腹落ちしない部分もあるかと思います。


そこでここでは、各企業が取り組むDXとIT化の事例を、それぞれご紹介します。


事例を通して、両者の違いをより明確に把握していきましょう。

4-1. DXの事例

まずは、DXの事例からご紹介します。

DXの成功事例企業の紹介画像

4-1-1. 呉服の小売企業が「体験を提供する企業」へと変革を遂げた事例

出典:【ドラマ仕立てで楽しく理解】平均年齢61歳の老舗着物店がDXへ挑戦!!DXってなんなん?!佐賀 小売企業編


呉服の小売販売業を営む株式会社鈴花では、「モノを売る企業から体験を提供する企業への進化」を目指してDXに取り組んでいます。


具体的には以下のような取り組みを通じて、新たな顧客体験の創出や、顧客との双方向のコミュニケーションを実現させています。


DXの取り組み内容

【取り組み】

  • 「顧客カルテ」の作成
    …販売員個人の手帳・記憶に点在していた担当顧客の情報(趣味・趣向・ライフイベント情報など)をデータ化しデータベースに集約。顧客データベースをもとに、販売員がタブレットで閲覧できる「顧客カルテ」を作成。
  • LINE公式アカウントでパーソナライズした情報提供
    …顧客データベースとLINEを連携させ、顧客の客層・嗜好に応じてイベント(着物を来て参加するランチ会・町歩きなど)告知や商品紹介を実施。
  • 双方向のコミュニケーションが叶う自社アプリをリリース
    …顧客データベースをもとに、「デジタルクローゼットアプリ」を作成し、顧客が自身の所有する着物・小物の情報を一目で確認できるように。
    さらにアプリ上に、顧客が自身の晴れ着姿の写真をアップしたり、販売員にコーディネートの相談ができる仕組みも構築。

【効果】

  • 担当販売員が不在でも、顧客カルテにもとづいた質の高い接客を提供し、顧客離れを防止。
  • パーソナライズされたタイムリーなプロモーションがLINEを通じて効率良くできるように。
  • デジタルクローゼットアプリを通じた「きもの保管サービス」事業の立ち上げが実現。
  • 顧客カルテでコミュニケーション履歴まで可視化でき、販売ロジックが明確になって若手販売員の著しい成長が実現。



これらの取り組みを通して、着物を着る機会の提供や、店舗・アプリでの質の高いコミュニケーションを実施し、まさに「体験を提供する企業」へと変革していることがわかります。


そして、そのようなビジネス変革が進む中で、新たな事業の創出や若手販売員のスキルアップなど、実益につながる効果も得られています。


このようなDXの取り組みは高く評価され、日本DX大賞のUX部門大賞を受賞しています。

大手タイヤメーカーにおいて新たな事業の柱が創出された事例の概要図

4-1-2. 大手タイヤメーカーにおいて新たな事業の柱が創出された事例
 
出典:経済産業省「DX銘柄2023 選定企業レポート」


タイヤメーカー大手の株式会社ブリヂストンでもDXが推進されています。


ブリヂストンでは、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして、社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」という長期ビジョンの実現に向け、バリューチェーン全体でDXを推進しています。


そのため具体的な取り組みも多岐に渡るのですが、ここではその一端を以下の通りご紹介します。


DXの取り組み内容

【取り組み】

  • 各種データの取得・蓄積
    タイヤに取り付けたセンサーから空気圧や温度などのデータを、車両の運行記録計から走行時間・走行距離などのデータを取得し、蓄積。
  • 遠隔モニタリングツールを開発
    取得・蓄積したデータをもとに、タイヤの状態を遠隔でモニタリングするツール「Tirematics(タイヤマティクス)」を開発。

【効果】

  • タイヤ製品と遠隔モニタリングツールを活用した「リアルタイムモニタリングサービス」などソリューション事業の拡大。2023年には、売上比率の20%レベルを達成する見込みとなっている。(2022年2月時点の予想

※リアルタイムモニタリングサービスとは
…タイヤの状態をリアルタイムで計測・モニタリングすることで、タイヤが起因となるトラブルを未然に防ぎ、安全な運行を支えるサービス。
タイヤに異常が検知された場合は、車両管理者やドライバーにアラートが通知され、速やかなメンテナンス提供が可能。
さらに、タイヤの空気圧を適正に管理することで、タイヤの空気圧不足による車両燃費の悪化を防ぎ、車両走行中のCO2 排出量削減などの環境負荷低減にも貢献。



こうした取り組みは、DXの定義をわかりやすく体現した好例と言えます。


事実、リアルタイムモニタリングサービスの提供をはじめとするソリューション事業の売上比率は順調に拡大しており、ブリヂストンは最早単なるタイヤメーカーとしての枠組みを脱却しつつあるのです。

経済産業省でもこの取り組みを高く評価しており、ブリヂストンを「DX銘柄2023」に選定しています。

4-2. IT化の事例

続いて、IT化の事例についてもご紹介します。

情報共有の効率化により売上にも好影響を与えているIT化の事例企業のサイト画像

4-2-1. 情報共有の効率化により売上にも好影響を与えている事例


出典:Chatwork


訪問介護事業を展開する株式会社ながいきでは、情報共有の効率化を図るため、チャットツールである「Chatwork」を導入しています。


その具体的な効果は以下の通りです。



IT化実施の効果
  • 利用者情報共有の効率化
    1人の利用者を3〜4人のヘルパーで担当する中で、グループチャットを使った効率的な情報共有を実現。
    従来の現場でよく見られる、ヘルパー同士の対面での申し送りや、サービス提供責任者を経由した間接的な情報共有などを行わずに済む。


  • 残業時間の削減/質の向上
    対面での申し送りをする必要がなく、月間の平均的な残業時間がヘルパーで8時間、管理者で20時間程度に留まっている。(サービス残業も珍しくない同業界の中では、低い水準と評価できる。)
    また、残業内容も追加訪問など売上に直結する業務となっている。


  • 利用者の満足度向上

    利用者ごとに立てられたグループチャットに、ヘルパーだけでなくサービス提供責任者も参加することで、利用者がサービス提供責任者へ別途依頼事項を連絡したり、ヘルパーごとに同じ要望を伝える必要がなくなる。利用者を担当するケアマネからも、ヘルパーの質や業務スピードを評価する声が上がっている。




こちらの事例では、介護の現場においてチャットツールを活用することで、申し送り事項や利用者情報の伝達・共有が効率的に行われ、利用者の満足度向上にもつながっています


さらに、残業においては、売上に直結する業務が行われており、同業界の平均的な売上の約2.7倍という高水準の売上にも寄与しています。

給与計算にかかる工数が1日から1時間に削減されたIT化の事例企業のサイト画像

4-2-2. 給与計算にかかる工数が1日から1時間に削減された事例

出典:ジョブカン


俳優・タレントなどのマネジメント/キャスティング業を行う株式会社大沢事務所では、給与計算業務の効率化などを目的として、スマートフォンによる打刻が可能な「ジョブカン」を導入しました。


その結果、以下の通り効果が得られています。


IT化実施の効果
  • 給与計算業務の効率化
    導入前は、タイムカードの打刻内容をシートに移して手作業でチェックする必要があったところを、打刻内容を承認するだけで済むように。
    このことで、1日かかっていた給与計算の工数が1時間程度に削減。

  • 給与計算の正確化・公平化
    残業や現場への直行などに関しては、従業員本人による申請をもとに勤務時間と給与の計算を行っていたが、GPS機能を備えたスマートフォンでの打刻が可能となったため、正確で公平な勤怠管理と給与計算が実現。



このように、給与計算にかかる時間が明白に短縮されていることから、人件費の観点でも余計なコストが削減できたことがわかります。


また、大沢事務所では働き方改革を進めていることもあり、給与計算の正確化・公平化はその大きな足掛かりとなっているはずです。

5. IT化で企業としての目的が達成できるならDXが必要とは限らない

IT化とDX化が必要か?の章のイメージ画像

事例を見てみると、企業としての目的を果たすために、DXに取り組む企業もあればIT化に取り組む企業もありましたね。


このことからもわかるように、IT化で目的が達成できるなら、必ずしもDXに取り組まなければならないというわけではありません。


重要なのは、あなたの会社の課題を解決し、将来のビジョンを実現することだからです。


そのために必要な手段がIT化であるなら、取り組むべきはDXではなくIT化なのです。


にも関わらず、DXが注目される状況に迎合してDXの推進を決断してしまうと、DX自体が目的となり、本来解決すべき企業課題や目的を見落としかねません。

DX化は会社の課題を解決し、将来のビジョンを実現することが本質的な目的であることを示した図

例えば先ほどご紹介したような、情報共有の効率化を図りたい訪問介護会社で、「ヘルパー対利用者」の介護様式を、「AI/ロボット対利用者」に変革し、介護ロボットの販売にまで事業領域を広げたとしましょう。


こうした取り組みが「情報共有の効率化」という目的に対して過剰といえます。
それだけでなく、ヘルパーとのコミュニケーションの上に成り立つ利用者の安心感・信頼感を阻害し、従来の顧客が離れてしまうことにもなりかねません。


逆に、小売企業が、これまで蓄積した販売データや顧客データをもとに、モノの販売ではない事業の形成を狙うなら、IT化では不十分です。


このように、企業の抱える課題・目的に応じて、どちらに取り組むべきかは違ってきます


適切な取り組みを進めていくため、まずは自社の課題・目的を洗い出し、進めるべきはDXとIT化のどちらなのか、慎重に見極めましょう。

6. DXに取り組むべきケース・IT化に取り組むべきケース

DXに取り組むべきケース・IT化に取り組むべきケースの章のイメージ画像

DXやIT化は、自社の課題・目的に応じて適切な方に取り組むべきだということは、すでにおわかりかと思います。


とはいえ、自社がどちらに取り組むべきか判然としないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。


そこでここでは、DXに取り組むべきケースとIT化に取り組むべきケースについて、それぞれ説明しますので、ぜひご参考ください。

6-1. DXに取り組むべきケース

DXの定義を見てみて、自社の目的やビジョンに大まかに合致するのであれば、DXに取り組むべきです。


DXの定義

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

出典:経済産業省「DX推進指標」



自社の目的に、「市場において優位な立場を築く」という視点があるなら、DXは目的達成の手段として必要になってくるはずです。


また、定義から、DXの取り組みとは簡単に言えば「ビジネスに変革を起こすこと」と捉えられます。
このため、ビジネスのあり方への変革が目的に盛り込まれている場合も、DXに取り組むべきと言えます。


【DXに取り組むべき企業の大まかな目的例】
  • 業界のリーディングカンパニーを目指したい
  • 既存のビジネスに革新を起こして競合との差別化を図り優位性を築きたい
  • 10〜20年先の将来を見据えて新たなビジネスモデルを確立したい
  • 市場の変化に対応するためにビジネスの変革が必要不可欠



こうした目的を掲げながら、DXに欠かせないデータ収集・蓄積やデジタル技術の導入が不十分だと感じられることもあるかと思います。


その場合は、当社クエストが

  • DXのためのデータ活用に必要な環境構築
  • データ分析・活用そのものの支援
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といった形で貴社のDXをサポートさせていただきます。

クエストの企業のIT化とDX化支援サービスの一覧
クエストのDXの根幹をなす、データエンジニアリングサービスの概要図

【おすすめサービス】DX推進の要となるクエストのデータエンジニアリングサービス

「DXの取り組みに顧客情報や商談内容のデータ化が必要だけど、できていない」
「日々社内で産出されるデータを収集・蓄積するための仕組みが整っていない」


など、DXを進める上でのお困りごとがあれば、ぜひ一度クエストにご相談ください。

6-2. IT化に取り組むべきケース

IT化に取り組むべきなのは、一言で言えば「自社課題の解決に業務の効率化が必要」な場合です。


IT化は、「ITやデジタル技術の活用によって、業務プロセスを効率化すること」ですから、業務プロセスにフォーカスした課題や目的があるなら、現状ではIT化を進めましょう。


【IT化に取り組むべき企業の大まかな目的例】
  • 既存事業の収益拡大のために生産性を向上させたい
  • 人手不足解消のために業務の自動化を進めたい
  • 人材確保や流出防止のために多様な働き方を叶えたい
  • 利益率向上のために余計なコストを削減したい



ただ、こうした業務の効率化を実現させるための具体的な施策について、まだイメージがついていないということもあるかと思います。
クエストはDXに欠かせないデータ活用に必要な環境構築からデータ分析・活用支援といったサービスに留まらず、IT化支援として業務効率化・生産性向上を実現する業務のデジタル化支援も行っています。一例として、お客様の業務効率化を実現するための機能を揃えたアプリケーションが利用可能なMicrosoft365の導入・運用サービスを通じて、お客様に最適なITソリューションを提供しています。


「業務効率化のために、どのようなITソリューションが適しているか悩んでいる。」
「導入すべきシステムやツールを判断しきれない。」


など、IT化を進める上でのお悩みやご不明点があれば、ぜひ一度クエストまでご相談ください。

7. まとめ

DXとIT化の違いについて、疑問が解消されたでしょうか?

最後に今回の内容をおさらいしておきましょう。

DXとIT化は、そもそも以下の通り目的が異なります。


【DXの目的】

 ビジネスに変革を起こして競争優位性を確立すること

【IT化の目的】

 業務の効率化



目的が異なるため、取り組み方にも以下のような違いが見られます。


【DXとIT化の取り組み方の違い】
違い DX IT化
規模 全社 部署/チーム単位から可能
期間 長期 短期でも可能
コスト 大きな投資が必 少額から可能
実施後の変化 ・ビジネスモデルの変容
・新規事業の創出
業務の時間短縮/省人化



このように、そもそもDXとIT化は別個の取り組みであり、必ずしもDXに取り組まなければならないというわけではありません。

企業としての目的を達成するために必要なのがIT化なのか、DXなのか、適切に判断し、本当に必要な取り組みを進めるようにしましょう。