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「さまざまな業務アプリを開発できるらしいけど、結局ローコードとはどういうものなの?」
「エンジニアじゃなくてもローコードなら業務アプリを開発できるって本当?」
このように、ローコードを活用すれば簡単に業務アプリを作れるらしいことは知っていても、明確な定義やメリット/デメリットなどがわからず、お悩みではありませんか?
結論からお伝えすると、ローコードとは、プログラミングをほとんど行うことなくアプリケーションやシステムを開発する手法のことです。また、その手法を可能にするプラットフォームを指す場合もあります。

従来の、プログラミングをフル活用するスクラッチ(プロコード)開発のようなプログラミングスキルは必要とせず、工数・開発費も抑えられるため、ローコードを導入すれば比較的容易に開発を行えます。
また、人の手で(ほぼ)プログラミングを行わないので、開発したアプリケーションの品質を一定に保ちやすいなど、多くの利点があります。
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アプリケーション等の開発を内製化したいと考えているのであれば、こうした利点のあるローコード開発は非常に魅力的ですよね。
ただ、安易に導入を決めてしまうのは早計です。
というのも、一からプログラミングを行わなくて良い分、カスタマイズの自由度はスクラッチ開発に劣り、自社の要件を満たすアプリケーションを開発できない可能性もあるからです。
また、ほとんど必要無いとはいえ、プラットフォームの仕様に無い機能はプログラミングによって追加しなくてはなりません。
つまり、開発チームのメンバーの中にプログラミングスキルを持つ人材が居ない場合は、スムーズに開発を進められない可能性もあるのです。
ローコードには、このようにデメリットもあります。
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そのため、自社がローコードの導入に向いているかどうかは、概要やメリット・デメリットを詳しく把握して、慎重に判断するべきです。
そこで今回は、ローコードについて、以下の通り徹底的に解説していきます。
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ローコード開発が自社に合っているかどうか、判断に足る情報が詰まった内容となっています。
自社に最適な開発手法を選択するために、ぜひご一読ください。
1. ローコードとは

早速ですが、ここではローコードがどのようなものか、その概要から説明しますね。
1-1. ローコードとはプログラミングをほとんど行わない開発手法のこと
冒頭でもお伝えした通り、ローコードとは、プログラミングをほとんど行うことなく業務アプリやシステム、Webサイト等を開発する手法のことです。
また、ローコード開発を可能にするプラットフォームのことを指す場合もあります。
ローコード開発では、そのようなローコードプラットフォームを使うことで、視覚的な操作によるアプリケーション等の構築を行うのです。
具体的には、プラットフォーム上に用意されている画面部品や機能を、ドラッグ&ドロップのような簡単な作業で組み合わせることで、アプリケーションの大部分を構築します。
その後、プラットフォームの仕様だけでは実現できない細かい機能や要件については、プログラミングを行い調整することも可能です。

このように、ローコードなら、アプリケーションの大部分を簡単な操作で構築できるため、従来の開発手法のようにエンジニアが一からプログラムを記述する必要はありません。
専門的なスキルを持たない人にも構築作業を行えるので、ローコード開発なら内製化も実現しやすくなるのです。
1-2. ローコードで開発可能なものの例
ローコード開発では、業務の効率化を助けるアプリケーションや、Webサイトなどを開発できます。
プラットフォーム上に用意されたテンプレートをベースに開発を進めるため、どんなものでも自由に作れるわけではありませんが、一般的な仕様のアプリケーション・Webサイトなら幅広く構築可能です。
具体的には、例えば以下のようなものを開発することができます。
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このように幅広く開発が可能ですが、部署を横断して活用するような大規模で要件が複雑なシステムや、ビジュアルに細部までこだわる必要のあるアプリケーション・Webサイトなどの開発は難しいです。
このあたりは「4-2.従来の開発手法より自由度が低い」で詳しく解説するので、そちらをご参照ください。
1-3. 他の開発手法との違い
アプリケーション等の開発手法には、ローコードの他にも、従来からのスクラッチ(プロコード)開発やノーコード開発があります。
ローコードについて、より正確に理解するため、これらの開発手法と何が違うのかも説明しますね。

1-3-1. スクラッチ(プロコード)開発との違い
スクラッチ開発は、一からプログラムを記述してアプリケーション等を構築する開発手法です。
プログラミングスキルを有するエンジニアが、以下の画像のようなソースコードを適切に打ち込むことで、アプリケーションが形になります。

プログラミングの技術・知識が必要なのはもちろん、一つのアプリケーションを構築するには膨大な量のソースコードを記述する必要があるため、工数も開発費用も大きくなります。
ただ、自由度高くソースコードを書けるため、アプリケーションのカスタムも柔軟に行えて、自社独自の機能や仕様を搭載させることも可能です。
こういったことからわかるように、ローコード開発とスクラッチ開発の特徴には主に以下のような違いが見られます。
違い | ローコード開発 | スクラッチ開発 |
---|---|---|
プログラミング | ほとんど行わない | 一から行う |
スキル | 高いプログラミングスキルは不要 | 高いプログラミングスキルが必要 |
工数・費用 | スクラッチ開発より抑えられる | ローコード開発より大きい |
カスタマイズ | 多少はカスタムできるが、限界がある | 自由にカスタム可能 |
このように、開発コストはスクラッチ開発の方が大きくなりますが、自由度高く開発できるため、独自の仕様を求める場合や、大規模で複雑なシステムを開発する場合には、スクラッチ開発が採用されることが多いです。
1-3-2. ノーコードとの違い
ノーコード開発は、プログラミングが不要な開発手法です。
ローコード開発は、アプリケーションの大部分をプラットフォーム上で構築し、必要に応じてプログラミングによるカスタマイズや調整を行いますが、ノーコード開発では一切のプログラミングを必要としません。
基本的には、プラットフォーム上のドラッグ&ドロップでアプリケーションを完成させることができます。

このため、プログラミングスキルも不要ですし、工数や開発費用もローコード以上に抑えられます。
ただ、プログラミングを一切行わないため、プラットフォーム上に用意されていない機能や仕様を追加しようとしても、基本的にその術はありません。
つまり、カスタマイズの自由度は、ローコードよりもさらに低いと言えます。
こういったことから、ローコード開発とノーコード開発には、以下のような違いがあることがわかります。
違い | ローコード開発 | ノーコード開発 |
---|---|---|
プログラミング | ほとんど行わない | 全く行わない |
スキル | 高いプログラミングスキルは不要 | プログラミングスキルは不要 |
工数・費用 | スクラッチ開発より抑えられる | ローコード開発よりさらに抑えられる |
カスタマイズ | 多少はカスタムできるが、限界がある | プラットフォームの仕様以上のカスタムはできない |
このように、開発の自由度は低いですが、ハードルが最も低い手法であるため、エンジニアが在籍していない企業でカスタマイズを要さない開発を内製する場合に、ノーコードは採用されやすいです。
2. ローコードが注目される背景

ここまで説明してきたように、ローコードは従来のスクラッチ開発よりもハードルが低い開発手法です。
このことから、同じくハードルの低いノーコード開発と共に、国内企業から多くの注目を浴びています。
実際、市場規模の推移は以下のようになっています。

出典:株式会社アイ・ティ・アール「ローコード/ノーコード開発市場2023」
※2022年度以降は予測値。
ここでは、このようにローコードが注目を集めることになった背景について説明します。
2-1. IT人材不足
ローコードへの注目と需要を高める背景の一つとして、国内のIT人材不足が挙げられます。
IT人材白書によれば、2019年のアンケート調査では89%もの企業が社内のIT人材について「大幅に不足している」ま
たは「やや不足している」と回答しています。
また、以下のグラフからもわかる通り、IT人材の不足傾向は年々大きくなりつつあります。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構「IT人材白書2020」
このように、エンジニア等のIT人材が不足する状況だと、システム開発や運用を社内では賄いきれませんよね。
ただ、ローコードのような、ハードルの低い開発手法を用いるなら、話は別です。
ローコードによりハードルが下がれば、従来「IT人材ではない」と区分していた従業員も、開発・運用に携わることができるからです。
こういったことから、IT人材不足に悩む企業が、その緩和・解消を見込めるローコード(+ノーコード)に注目しているのです。
2-2. 「2025年の崖」問題
いわゆる「2025年の崖」問題も、ローコードが注目されることとなった背景の一つです。
経済産業省によりDXの阻害要因として紹介された、老朽化したシステムが2025年頃を境に引き起こす種々の問題のこと。(以下参照) |
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こうした問題が、DXを阻害するだけでなく、経済的な損失も招くということで、社内システム(アプリケーション)の刷新が求められるようになりました。
とはいえ、先に述べたように、社内にIT人材が不足する中ではそのような対応が難しく、全て外注するとなれば莫大な費用もかかります。
その中で、コスト(高度な技術・開発工数・費用)を抑えて開発を進められるローコード(+ノーコード)は「2025年の崖」問題に直面する企業にとって、ニーズにマッチするものでした。
こういったことから、システム開発や運用の全て、あるいは一部を内製化しやすくなるローコードが、注目を浴びることとなったのです。
2-3. VUCA時代の到来
市場や環境が目まぐるしく変化する「VUCA時代」の到来も、ローコードへの注目・需要を高める背景の一つです。
VUCA時代とは
市場や環境において、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が高く、変化が激しい時代のこと。
現代は、このようなVUCA時代とされており、企業にもその激しい変化に対応できるスピード感や柔軟性が求められています。
システムやアプリケーションの開発においても、従来のように開発に時間をかけていれば、「完成する頃には環境が変わっていて、機能が不十分」ということになりかねません。
一方、ローコードなら、プログラミングがほぼ不要なためスピーディーな開発が可能ですし、内製化が実現すれば外注先の改修対応を待つ必要もなくなります。
このように、迅速・柔軟にアプリケーションを開発したり改修したりできるローコードは、VUCA時代と相性が良く、年々需要が高まってきているのです。
3. ローコードで開発を行うメリット

ここまでの内容で、ローコードの利点についてもイメージしやすくなったのではないでしょうか。
改めてそのメリットを整理してみると、以下のようになります。
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一つずつ詳しくご紹介しますね。
3-1. 開発工数を削減できる
1つ目のメリットは、開発工数を削減できることです。
ローコード開発では、プラットフォームに用意されたテンプレートや機能を組み合わせることでアプリケーションの大部分を構築します。
プログラミングは、プラットフォームに用意された部品だけでは実装できない機能や仕様を付加する部分に対してのみ行います。
このため、全てをプログラミングによって構築するスクラッチ開発に比べて、大幅に開発工数を削減することができるのです。
実際に開発工数が削減されたケースとして、以下のような事例もあります。
・建設業での基幹システム再構築において工数の60%を削減
…従来の開発手法で進めた場合、24ヶ月かかると想定されていたところを、10ヶ月でリリースを実現させた。
・金融業での外国為替予約システム刷新において工数を3ヶ月短縮
…総工数は約300人月だったが、スクラッチ開発の想定工数に比べて30〜40%の工数削減となった。
・飲料メーカーでのワークフローシステム開発において20%の工数削減
…想定では100人月を超える規模だったが、約20人月の工数を削減して、予定よりも1カ月以上早く完成に漕ぎ着けた。
このように、ローコードで開発を行えば、従来のスクラッチ開発で想定されるよりも、格段に工数の削減が期待できるのです。
3-2. 開発リソースの確保が容易になる
2つ目のメリットは、開発リソースの確保が容易になることです。
先述の通り、ローコード開発では、プラットフォーム上の部品を組み合わせてアプリケーションの構築を行いますが、この構築作業は、ドラッグ&ドロップなどの簡単な操作によって行う場合がほとんどです。
それくらいの操作であれば、普段パソコンに触れている人なら誰でもできますよね。
ローコード開発では、そのような簡単で視覚的にわかりやすい操作による構築が可能なので、エンジニアなどのIT人材に限らず、アプリケーションの構築作業を行えます。
このため、従来のスクラッチ開発よりも開発リソースを容易に確保できるのです。
3-3. 開発費用を抑えられる
3つ目のメリットは、開発費用を抑えられることです。
これは、すでにメリットとしてご紹介した「開発工数を削減できる」ことや「開発リソースの確保が容易になる」ことに起因しています。
まず、開発工数を削減できることは、開発費用を抑えることに直結しますよね。
工数が少ないということは、それだけ必要な労力が少なく、人件費を抑えられるということだからです。
また、開発リソースの確保が容易になるということは、社内のIT部門以外の従業員も開発要員として起用できるという状況を意味します。
つまり、開発の内製化が促進され、外部に発注するよりも開発費用を抑えやすくなるということです。
こういったことから、ローコード開発は、従来のスクラッチ開発よりも費用を抑えやすいことがおわかりかと思います。
3-4. 成果物の品質を一定に保ちやすい
4つ目のメリットは、開発する成果物の品質を一定に保ちやすい点です。
お伝えしている通り、ローコード開発ではほとんどプログラミングを行う必要がありません。
つまり、人の手によるプログラムの記述がほとんど行われないということです。
そのため、膨大な量のソースコードをエンジニアが記述する従来の開発手法に比べて、記述ミスによるバグやエラーが発生する可能性も自ずと低くなります。
こういったことから、開発するシステムやアプリケーションの品質が一定以上に保ちやすいと言えるのです。
3-5. プログラミングによるカスタマイズもできる
5つ目のメリットは、プログラミングによるカスタマイズも行えることです。
ローコードは、ほとんどプログラミングを行わない開発手法ですが、裏を返せば部分的にはプログラムを記述することもできるということです。
この部分的なプログラミングによって、プラットフォーム上に用意されている機能や部品をある程度カスタマイズできるのです。
具体的には、以下のようなことが、ローコード開発において可能となっています。
・外部システムとの連携アプリケーションを外部システムと連携させ、システム上の機能を引き込むことができる。 例えば、アプリケーションの操作画面はローコードで作成し、実際の処理は既存のシステム/APIに行わせるということが可能。
ローコードプラットフォーム上に用意されている機能を拡張してアプリケーションに搭載できる。 |
連携・拡張可能な範囲はプラットフォームによりますが、プログラミングを一切行わないノーコード開発に比べれば、ローコード開発における開発の自由度は格段に高いと言えます。
4. ローコードで開発を行うデメリット

ローコードによる開発には、ご紹介したようなメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
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ローコードの導入を視野に入れているのであれば、こうしたデメリットについてもしっかり把握しておく必要があります。
一つずつ順番に見ていきましょう。
4-1. プラットフォームの使い方を習得する必要がある
1つ目のデメリットは、ローコードプラットフォームの使い方を習得する必要があることです。
ドラッグ&ドロップのような簡単な操作でアプリケーションの大部分を構築できるとはいえ、プラットフォームの細かい使い方や用意されているテンプレート・機能について知らなければ使いこなすことはできません。
このため、マニュアルに目を通したり、本格的な開発を進める前に操作に慣れるためのデモンストレーションを行うなど、ある程度の事前学習が必要です。
従来の手法と比べて開発のハードルが下がるとはいっても、新たなツール(プラットフォーム)を用いる以上、その使い方を習得しなければならないという点は留意しておきましょう。
4-2. 従来の開発手法より自由度が低い
2つ目のデメリットは、従来の開発手法(スクラッチ開発)よりも開発の自由度が低いことです。
先ほどメリットをご紹介した際に、「プログラミングによるカスタマイズもできる」とお伝えしましたが、ローコード開発で行うプログラミングはあくまで部分的なものです。
そのため、全面的にプログラミングを行い、柔軟に開発を進められるスクラッチ開発に比べると、どうしてもカスタマイズできる範囲は限定されてしまいます。
こうしたことから、ローコードは以下のような開発には不向きとされています。
- 全社で横断して利用するような大規模で複雑なシステム、アプリケーション
- 株価チャートなどの動的なコンテンツを要するシステム、アプリケーション
- UI/UXの細やかなデザインによる訴求が必要なアプリケーション、Webサイト
プラットフォームによってカスタマイズできる範囲は異なるため、一概に「ローコードではこうした開発が不可能」とは言えませんが、一般的に難しいとされているということは覚えておいてください。
4-3. 基本的なプログラミングスキルを持つ人材も必要
3つ目のデメリットは、基本的なプログラミングスキルを持つ人材も必要という点です。
ローコード開発では、プログラミングはほとんど必要ありませんが、プラットフォームの仕様だけで叶えられない要件は、プログラミングで実装することになります。
このため、まずソースコードを記述できる人材は開発チームに必要です。
また、その他にも、業務プロセスをアプリケーションでどのように効率化させるのかを的確に判断する「業務プロセスの設計・分析力」や、要件を満たすシステムを設計する「システム設計力」、開発スケジュールを立てるための「工数計算スキル」などを持つ人材も必要です。
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開発に携わる全員に必要なわけではありませんが、開発チームの中にこうしたプログラミングスキルを持つ人材は確保しておかなければなりません。
5. ローコードによる開発事例

ここまで、ローコードによる開発がどのようなものかをメリット・デメリット含め解説してきましたが、実際、どのように開発が行われているのかも気になるところですよね。
そこでここでは、ローコード開発の事例をご紹介します。
ローコードによってどんなものを開発したのか、その際の開発効率はどうだったのか、という点に着目しつつ各事例を見ていきましょう。
5-1. 開発期間を50%短縮して生産管理システムを刷新した事例
製造業を営むA社では、ローコードにより、それまで使用していた市販のパッケージシステムを刷新、新たな生産管理システムを開発しました。
市販のパッケージシステムは定期的にバージョンアップが必要であり、維持費が大きな負担となっていたことから新たな生産管理システムの導入を決めたのですが、この時の開発手法としてローコードが用いられました。
というのも、A社の従来の開発は、スクラッチ型である上、国内外の多数の開発者が関わる体制だったことから伝言ゲームでのプロジェクト進行が常態化し、効率化と品質の向上が望めない状況だったからです。
こうした開発体制から脱却するため、ローコードを用いて内製で開発を進めることとなったのです。
新たな生産管理システムの開発にあたり、ローコードプラットフォームとしてOutSystemsを採用、開発チームには社内のIT部門11名+Outsystemsの技術支援要員(外部)が参画しました。
その結果、従来の開発手法で進めた場合は3年程かかると想定された開発期間が、1.5年まで短縮され、開発の生産性も20~30%向上させることに成功しています。
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こちらの事例では、開発を内製化したことに加え、開発期間が50%も短縮できたことから、開発費用も大きく削減できているはずです。
また開発生産性が向上したことから、今後の開発についてもスピーディーな進行とコスト削減が見込まれます。
5-2. 非エンジニアが業務効率化アプリを3ヶ月で開発した事例
大手保険会社のB社では、ローコードにより、非エンジニアの従業員が業務効率化アプリの開発を行いました。
B社では、不在の担当者宛にかかってきた電話の引き継ぎに時間がかかることが課題となっており、これを解決するためのアプリケーション開発にローコードを用いられました。
それまで、電話を受けた人は、担当者の机の上に電話内容をメモした紙を置きに行き、担当者は席に戻った際にメモを確認・電話相手に対応するという状況でした。
こうした状況を改善すべく、ローコードプラットフォームであるMicrosoft社のPower Appsを使って、「電話連絡帳アプリ」を開発。これにより、担当者がスマホでいつでも「いつ、誰から、どのような電話があったか」を確認できるようになったのです。
この「電話連絡帳アプリ」の開発は、エンジニアやIT部門の従業員ではなく、経営企画の従業員によって行われ、開発期間も3ヶ月程度だったと言います。
また、これを機に社内でデジタルツールを使った業務変革体制の構築やITの内製化が加速していきました。
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このように、開発経験の無い従業員でも3ヶ月でアプリケーションをリリースできることから、ローコード開発のハードルの低さがわかりますね。
また、これを機に開発の内製化も促進されており、今後のコスト削減にも大きく期待できるはずです。
6. 開発を内製化していきたいならローコード開発がおすすめ

ここまでお読みになって、ローコード開発のハードルの低さや、コストパフォーマンスに期待を感じられているのではないでしょうか。
とはいえ、実際に自社に導入すべきかどうかについては、判断に迷われているかもしれませんね。
そのような方のためにお伝えしておくと、開発を内製化したいならローコード開発はおすすめです。
ローコードなら、スクラッチ開発とは違い、非エンジニアの従業員も開発作業が担うことができるので、新たな人材を雇ったり、時間をかけて育成することなく内製化の促進が期待できるからです。
ただ、この点はノーコード開発にも言えることです。
そこで、さらにケースを絞ると、開発において「一般的な業務アプリをベースにしつつカスタマイズも行いたい」という要望をお持ちなら、ノーコードではなくローコードが適していると言えます。

ローコード開発は、以下の通り、こういった要望にベストな開発手法だからです。
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このように、簡単な操作で大部分の開発が行えて、ある程度のカスタマイズもできるローコード開発だからこそ「一般的な業務アプリをベースに自社の業務に合わせてカスタマイズしたい」という要望に応えられます。
こうした要望をお持ちなら、社内のエンジニアや外部のサポート企業の協力の下、ぜひローコード開発に取り組んでみてください。
7. ローコード開発で使われる代表的なプラットフォーム3選

ローコードでの開発を実践していくのであれば、どのプラットフォームを使うのかを検討する必要があります。
ただ、ローコードプラットフォームは数多く存在するため、選定作業にどう着手すれば良いか迷われるかと思います。
そこでここでは、プラットフォーム選びの初手として、世界中の企業で導入・活用されているMicrosoft Power Appsをはじめ、シェアの大きい代表的なローコードプラットフォームを3つ押さえておきましょう。
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各プラットフォームの特徴について、ご紹介しますね。
7-1. Kintone(サイボウズ)

出典:Kintone
サイボウズ株式会社のKintoneは、非IT部門の担当者による業務アプリケーション開発において人気のローコード/ノーコード開発プラットフォームです。
部署や業務別に100を超えるサンプルアプリが用意されており、必要なアプリを選んだ上でデザインや設定、構成等を編集して使うことが可能です。
また、API連携やJavaScript/CSSを用いることで、より自社の業務にマッチした形にカスタマイズすることもできます。
つまり、Kintoneはノーコード開発とローコード開発のどちらも可能なプラットフォームなのです。
このため、非IT部門の担当者によるシンプルなアプリケーション開発にも、IT部門(+非IT部門)の担当者によるやや複雑なアプリケーション開発にも対応でき、より柔軟な社内開発が実現します。
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7-2. 楽々Framework3(住友電工情報システム)

出典:ローコード開発基盤 楽々Framework3 | 住友電工情報システム
楽々Framework3は、住友電工情報システム株式会社のローコードプラットフォームです。
その大きな特徴は、ローコードによる新規のアプリケーション開発だけでなく、既存システムの再構築も可能な点です。
楽々Framework3では、古いシステムのデータベースを自動解析してその定義情報を流用することができます。これにより、既存システムの再構築・近代化を可能としているのです。
また、チームの情報共有ツールから基幹系システムまで幅広い開発に対応できることから、多様な用途に活用できるローコードプラットフォームと言えます。
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7-3. PowerApps(Microsoft)

MicrosoftのPower Appsは、Microsoft製品やその他の外部ツールとの柔軟な連携が可能な点が特徴的なローコードプラットフォームです。
(Power Appsは、マイクロソフト社の中でも高い評価を受けており、「世界で最も完成度の高いローコードアプリケーション開発プラットフォーム」という意見もあがっています。)
このため、社内の既存システム(ツール)とも連携しやすく、比較的自由度の高いローコード開発が叶います。部署をまたぐ業務アプリケーションも開発しやすいです。
また、Microsoftが提供しているだけあって、アプリケーションを構築する際の操作感はPowerPointやExcelに通ずるものがあります。
Office 365、Dynamics 365、AzureなどのMicrosoft製品との親和性も高いため、同社の製品を活用している企業から人気が高いプラットフォームです。
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こうしたローコードプラットフォームの中でも、Microsoft製品との親和性が高いPowerAppsに関心をお持ちなら、ぜひ当社クエストまでご相談ください。
クエストの提供するMicrosoft365の導入・運用サービスでは、Power Appsによる業務アプリの内製化の支援も行っております。

「Microsoft製品を多用しているからPower Appsに興味があるけど本当にアプリの内製が叶うか不安…」
「内製化するにしても、Power Appsについて不明点があった際の相談先が欲しい。」
など、Power Appsによるローコード開発に興味がありつつも不安を感じられているなら、クエストの伴走型のサポートがお役に立てるはずです。
ぜひお気軽にご相談ください。
8. まとめ
ローコードとはどういうものか、おわかりいただけたでしょうか。
最後に今回の内容をまとめておきます。
まず、ローコードとは、プログラミングをほとんど行うことなく業務アプリやシステム、Webサイト等を開発する手法のことです。
ローコードで開発を行うことには、以下のようなメリットがあります。
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一方で、次のようなデメリットも存在します。
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このようなローコードは、
「開発を内製化したい」
「一般的な業務アプリをベースに自社の業務に合わせてカスタマイズしたい」
というケースにあてはまる場合に、適した開発手法と言えます。
あなたの会社がこうしたケースに該当するのであれば、ぜひ今回の内容を参考に、ローコード開発への第一歩を踏み出しましょう。