東急テックソリューションズ株式会社

東急グループにおけるIT機能の中核会社としてITプラットフォーム基盤の維持と今後のデジタルトランスフォーメーションの推進を担っている東急テックソリューションズ株式会社。2016年、前身の株式会社東急コンピュータシステムから現社名への変更を期にIT企画、開発といった上流工程への参画も増加させて、グループにおけるITのハブとして機能している。

東急グループでは2022年の創業100周年に向け、投資と事業再編を加速させている。その一環でデジタルテクノロジーの活用も積極的に進めており、今回のAWS導入もこの潮流に含まれている。
プロジェクトの概要と背景などについて、東急テックソリューションズ株式会社 開発ソリューション事業部の江川 琢雄氏、開発ソリューション事業部 小笠原 弘二氏に話を伺った。

【お話を伺った方】
東急テックソリューションズ株式会社

開発ソリューション事業部

部長 江川 琢雄氏 (右)

課長補佐 小笠原 弘二氏(左)

課題と経緯

データ活用の可能性を広げるビッグプロジェクトにパートナーとして指名

多くのポイント付与事業者の存在が表すように、日本人はポイント好きな国民性とされる。その背景ではポイントによる優良顧客の囲い込みが熾烈を極めている。矢野経済研究所の調査によると、2017年度のポイントサービスの市場規模は1兆8000億円に迫る勢いであり、今後も右肩上がりが続くと予測されている。数あるポイントサービスの提供事業者の中で地域密着型という独自のポジションを築いているのが「TOKYU POINT」である。2006年から始まったサービスは現在、220万人の登録者を抱え、東急グループのリテール事業における重要な基盤となっている。

「TOKYU POINTでは、顧客情報と紐づく購買データなどを取得してきていました。しかし、電子マネーやIC定期券、スマートフォンなどのデジタルテクノロジーが普及してきたことで、より多くの行動データを得られるようになりました。データ単体では価値が限られてしまいますが、それぞれを関連付けることで可能性は大きく広がります。利用者であるお客様へのサービス向上に活用するべく、リテール店舗のPOSデータ、券売機・改札の通過データといった行動データの連携を推進しています。これらの取り組みは東急グループ全体としての魅力へと繋がることを意味します。」と江川氏はプロジェクトの構想段階の当時を振り返る。

購買データだけでなく行動データまでとなると、いわゆる「ビッグデータ」と呼ばれる領域となる。データウェアハウス(以下、DWH)も相応のものが求められることになる。新たなステージへと進むために必要なDWHについて構想を練り始めたのは2015年秋頃。データ量や処理スピードを考慮するとオンプレミスによる構築では費用面がネックとなり、クラウドファーストの開発方針とした。

東急テックソリューションズ(株) 開発ソリューション事業部 部長 江川 琢雄氏
東急テックソリューションズ(株)
開発ソリューション事業部 部長
江川 琢雄氏

「リプレースにあたってRFPを私たちでまとめ、2016年春に複数社による開発ベンダーコンペティションを実施しました。性能面、コスト面、そして拡張性における優位性からAWSとAmazon Redshiftを採用することは既に社内で決定していました

その上で開発方針と体制、そしてリリース後の運用まで俯瞰して見た時にバランスがとれていたのがクエスト様です。もともと、別の東急グループ会社での運用業務委託、そして今回のプロジェクトにも関連するウェブサイトの構築でも実績があり安心して依頼できました。」(江川氏)

導入

リリース直前のアクシデントもスクランブル体制でクリア

本プロジェクトの前段階であるコンペへの招集において当初はクエストには声はかかっていなかった。招集のきっかけとなったのにはBIツールが関係していた。クエストでは別の東急グループ会社においてBIツールの導入実績を有している。

このプロジェクトにおいても、DWHと合わせて分析・検証のためのフロントツールとしてBIツール導入が要件のひとつとして挙げられていた。


「BIツールの導入は基幹システム側の設計に大きく依存します。グループ会社で以前導入した時の様子を関係者に確認したのですが、困難な開発要件をしっかりとやり切ってくれたクエストへの信頼は厚いものでした。開発でも運用保守でもさまざまなアクシデントに対し、その都度真摯に取り組んでいるとのことでした。

DWHの場合、運用開始後に状況が刻々と変化していくことは容易に想像できます。エラーがいつ発生するかもわかりません。その点で安心して任せられる企業かどうかは重要視していました。」(江川氏)

東急テックソリューションズ株式会社

結局、BIツールは「軽技Web」を採用するということで決着することになった。DWHのベースとなるクラウド「Amazon Redshift」との繋ぎ込みや、複雑すぎない機能性を評価した結果である。

リプレース前のBIツールとDWHの連携は、処理に時間を要する上、専門の担当者でなければ操作ができない状況であった。「限りなくリアルタイム、誰でも使える」システムでなければ、導入後の社内での活用が見込めない。だからこそ、ここは妥協なくこだわりたいというのが江川氏の想いだった。

東急テックソリューションズ(株) 開発ソリューション事業部 課長補佐 小笠原 弘二氏
東急テックソリューションズ(株)
開発ソリューション事業部
課長補佐
小笠原 弘二氏

当プロジェクトではこの想いに応えるため、SQLと連動する部分を一部スクラッチで開発をおこなった。加えて、既存BIツール上での問題点を現場からヒアリングして都度提案していくというスタイルで作業は進められていった。

リプレース前の時点でもBIツールで出力していた帳票は300以上に及んでいた。ひとつひとつを疎かにせず、丁寧に対応していくことはクエストの得意とするところだ。もちろん、BIツールの導入以外でもポイント付与関連など、難しい判断が迫られる箇所は随所に存在していた。

それらをひとつひとつクリアしていき、ゴールが見えてきたタイミングで事態が急変することとなった。

「リリースの1ヶ月前の最終テスト段階になって、想定とは全く異なるレイアウトでデータが送られてくることが判明しました。送付側の基幹システムがもはや完全に仕様確定している状態であり、上位から変更してもらうという対応はとれません。

さらに、タイミングは既に社内外関係者へリリースのアナウンス後だったため、延期するという判断もとることができない。もちろん、事故を引き起こしては本末転倒です。苦慮した結果、上位から送られてきたデータを想定のレイアウトに変換する追加対応を行うことで、リリースのメドがつきました。

以降はクエストも増員体制で対応してくれて、無事にリリースすることができました。リリース後も以降のスケジュールが詰まっていたため、残タスクを消化しながら並行して次のフェーズの作業も進めるということになり、2ヶ月間ほどスクランブル体制が続きました。

しかし、大きな事故もなく乗り切り、プロジェクトを完遂したことで、私たちからクエストへの信頼はより強固なものとなりました。」(小笠原氏)

効果と展望

オンプレミス比較で6割に収まったコストと向き合う姿勢を評価

「当初の懸念であったコスト面も結果的に5年換算で算定すると、オンプレミスで構築した場合の6割に収まっており、申し分ない数字です。しかし何よりも、プロジェクトの最中に発生したアクシデントに音を上げず実直に対応してくれた姿勢、そしてリリースに間に合わせたという結果を評価しています。

当社が今後手掛けていくプロジェクトでも引き続き『頼れるパートナー』として歩んでくれることを期待しています。」(小笠原氏)

今回取り上げたプロジェクトはポイントDWHに続き、スーパー事業でのPOSデータ、鉄道事業での券売機・改札の販売データ・通過データとの連携も完了し、次のステージに向け新たな動きも加速しつつある。券売機・改札のデータ連携ではネックとなった膨大なデータ量に対し、Amazon RedshiftのSpectrumを利用することで効率的なデータトラフィックを実現するなど、クエストはプロジェクトの随所で価値ある提案・実装に取り組んできている。

今後も続くプロジェクトにおいても「頼れるパートナー」との信頼に応えるべく、クエストとしても寄り添ったスタンスを堅持する。その先に、東急グループ全体としての顧客サービス向上がある。クエストもサポートする立場として、その大きな未来を描く一助になれればと考えている。

 

取材日:2019年2月19日

会社名
東急テックソリューションズ株式会社
設立
1986年(昭和61年)4月
売上高
29億39百万円(2018年3月期)
従業員数
205名(2018年3月31日時点)
事業内容
情報システムの企画・設計・開発・保守運用
ITに関するコンサルティング、各種ソリューション提案
情報システム機器等の販売・リース