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RPA導入を成功させるには事前準備が重要

ここ数年、RPAというキーワードがビジネスやテクノロジー系メディアなどで頻繁に登場するようになりました。RPAとは、Robotics Process Automationの頭文字をとった言葉で、これまで人間がパソコンでおこなっていた定型的な作業を、ソフトウェアロボットが代替することで自動化するテクノロジーです。

RPAを導入することで得られるメリットはいくつも挙げられます。例えば、従業員を単純作業から解放できます。昨今の人材をめぐる変化を考慮すると、単純作業から解放することで創造的な仕事にシフトできる点は、重要な労務施策に位置するとみなすこともできるでしょう。RPAは、人間とは違い作業ミスがなく、単純作業の時間削減を可能とし、さらには24時間常時稼動が可能なため、生産性の向上が見込めます。

日本国内でも、すでにさまざまな業種の企業にRPAが導入され、大きな成果を出しています。しかし、どのような業務でもRPAを導入すれば、即座に業務効率が上がるというわけではありません。RPA導入を成功させるには、事前準備や段階を踏んだ導入が必要になります。事前の準備として求められるのは、業務状況の把握、概念実証(PoC)の結果を分析し、設計につなげることです。準備の工程が不十分だと、せっかくRPAを導入しても期待したような成果を得られない可能性が高くなります。

RPA導入をどのようにおこなうか

RPAを導入・運用するための流れは、大きく次の3つのフェーズに分けることができます。

RPAを導入・運用するための流れ

次に、RPAを導入する手順の概要を説明します。RPAの導入手順は、以下のように大きく3つのフェーズに分けることができます。

1) 導入検討・準備フェーズ

最初のフェーズが、導入検討・準備フェーズです。3つのフェーズの中でも、特に重要なフェーズとなります。RPAを適用する範囲を明確化することを目的とします。まず、RPA化できる業務を洗い出し、可視化します。業務の洗い出しは、各業務部門と情報システム部門が連携しておこなうことが理想です。

続いて、RPAのツールの選定です。RPAツールは各社からさまざまな製品が提供されていますが、それぞれが得意とする領域や導入プロセスなどが異なります。客観的な判断材料を得てツールを選定し、自社にてRPA化したい業務や予算を考慮して選定を進めていきましょう。また、この段階から導入時のトラブル対応やRPAの運用・保守をおこなう組織・体制の構築を検討しておくことも重要です。

また、このフェーズでPoC(概念実証)をおこなう企業が増えています。PoCとは、新しいプロジェクトが本当に実現可能かどうか、効果やその影響範囲、技術的な観点から検証することです。本格導入の前にPoCをおこなうことで、導入失敗の可能性を減らすことができます。PoCでは、実際にルールを作成して、限定的な導入をおこない、その成果を検証することになります。

2) 導入・運用フェーズ

2つめが導入・運用フェーズです。このフェーズでは、RPAの導入とその運用の定着を目的とします。ここで重要になるのが、スタートアップ企業などの話題でも耳にする、「スモールスタート」という考え方です。スモールスタートとは、RPA化が可能なすべての業務に一気にRPAを導入してしまうのではなく、まずは部署単位やチーム単位といった、小さな枠組みの中で適用を開始することです。

スモールスタートすることで、適用業務のRPAに対する適性や、企業文化との相性などを判断する材料が揃います。また、スモールスタートで露呈された問題点を分析し改善することで、本格導入時にそうした問題が生じるリスクを減らすことができます。

3) 拡大フェーズ

最後の拡大フェーズでは、RPAの浸透と従業員との共存がテーマとなります。RPAの導入による成果が得られたことがわかれば、RPAによって自動化した業務の隣接業務への適用拡大や、部署単位での運用から全社単位への導入対象拡大などが視野に入ってきます。

また、RPAの運用を続ける際は、時間の経過ともに適用業務の内容が変わる可能性があることにも注意が必要です。例えば、法制度の変更による業務内容の変化など、そうした業務変化に合わせ、定期的にロボットのメンテナンスをおこなうことや、契機を見計らってRPAの導入効果を分析することも重要なポイントです。導入効果の分析では、単純な費用対効果だけでなく、可視化されづらい従業員のモチベーションへの影響など、定量的だけでなく定性的な調査データも含めて取得できれば、より望ましいといえるでしょう。

さらに、本格導入にともなって発生する新たな問題点の解決方法を模索していくことも、このフェーズでは求められます。

RPA導入が失敗する理由

RPA導入が失敗する理由

事前の調査や準備を疎かにして、単にRPAを導入しただけでは期待した成果が得られないこともあります。どのような場合に、思うような成果が得られないと感じることになるのか。主な原因をいくつか挙げてみます。

対応業務の洗い出しや可視化が不十分

これはよくあるパターンです。RPAには適した業務と適していない業務がありますので、導入前に自社の業務のどのような場面で使えるのかしっかり洗い出しをおこない可視化することが大切です。

十分な体制や計画を持たずに導入する

RPAの運用や保守を見据えた体制や計画を十分に練らずに導入すると、当初は運用がうまくいったとしても、時が経過するとともに問題が生じ、最終的にはRPAの動作にエラーが生じることや、動作しなくなるという可能性があります。

RPAツールができることの限界を理解してない

RPAツールはあくまでも定型的な作業を代替するものであり、未知の業務に対してRPAが新たに自分でルールを作成してくれるわけではありません。RPAではどのような作業が代替可能で、逆に不得意な作業はなにか、ツールの特性と限界を理解することが大切です。

最初から自分たちだけで進めようとする

社内にRPAツールに詳しいエンジニアやRPAツールの導入経験がある人がいる場合は別ですが、経験者等がおらず、初めてRPAツールを導入するというのであれば、RPAツール導入セミナーへの参加や導入支援サービスなどを利用すると導入成功の可能性は高まります。

システム連携先の調査不足

RPAツールと連携する社内システムや社外システムの稼働状況をしっかり調査せずにRPAを導入すると、システム連携に問題が起きやすくなります。普段の業務で利用している際はあまり意識していなかったものの、社内でシステム連携していた、ということも少なくありません。RPAを導入する際には、情報システム部門など社内外のITに詳しい担当部署・担当者と連携することが望ましいでしょう。

画像認識への依存度を高くしすぎる

RPAツールによっては、OCR機能と連携し、手書き帳簿などの画像認識が可能なものもありますが、画像認識技術はどれほど高精度なものでも、100%の精度で認識するということはありません。画像認識への依存度を高くしすぎず、限度を見極めながら運用していくことが望ましいでしょう。

失敗を予防するために必要なこととは?

RPA導入失敗を予防するのに必要なこととは何でしょうか?導入失敗の予防策として考えられることをいくつか挙げてみます。

RPAに精通した人材の育成

RPAに詳しい担当者を育成し、RPA導入プロジェクトで中心的な役割を果たしてもらい全体的にみてもらうようにすれば、失敗を防ぐ可能性が高まります。

実務に即したマニュアルづくり

それぞれの業務ごとにRPAツールを利用するためのマニュアル作成も重要です。しっかりとマニュアルを作成しておけば、実務で利用するユーザーも戸惑うことがありません。

ソフトウェアロボットのレビュー

RPAツールの専門家(導入サービスをおこなっているSIerなど)に、自社で作成したルールのレビューをしてもらうと、ツールが誤動作する可能性が低くなります。

RPA導入を成功させるには事前準備が重要

2020年の東京オリンピックに照準を合わせるかのように「働き方改革」が進んでいます。しかし、「急いては事を仕損じる」ということわざもあるように、周囲の企業が導入したからといって、慌てて導入すると失敗するだけです。

RPAは、今まで人手をかけておこなっていた作業を自動化し、人件費の削減に貢献するだけでなく、従業員のモチベーション向上にもつながるものです。RPAは大企業だけでなく、中小企業でも導入可能で、働き方改革にもつながります。しっかり準備をして確実な導入をおこなうことで、RPA導入のメリットを広く享受してください。

さいごに

今回説明してきたように、RPAの導入は事前準備が要となります。特にPoCの実施は、RPA導入プロジェクトの成否を分けるといっても過言ではありません。しかし、社内にそういった対応をおこなえるリソースがないということもあるかもしれません。その場合、RPA導入検証サービスなどを提供している専門家の手を借りることを検討してみてください。クエストでもRPA導入・運用サービスを提供しています。