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円高から円安の時代へ―環境変化で企業は国内回帰

アベノミクスの「大胆な金融緩和」からの日銀の量的・質的緩和を契機に、円高から円安へと大きく流れが転じたのはご存知の通り。輸出を柱とする企業は軒並み業績好調が続く一方、原材料を輸入に頼っている企業は材料費の高騰に経営を圧迫されています。

中でも円高を受け、製造拠点を海外にシフトしたり、システム開発をオフショアしていた企業にはどのような影響を受けたのでしょうか。円高というアドバンテージがなくなった今、当初見込んでいた為替差益によるコストメリットが得られなくなったことは言うまでもありません。しかも、現地の人件費高騰も合わせると、コストメリットはますます少なくなります。すると、言葉の壁、ビジネス慣習や労働環境の違い、重大なトラブル時の対応、はたまたカントリーリスクなど、海外のデメリットがより浮かび上がり、不確定要素の多い海外にて現地で苦労を重ねる意義に疑問符がつきます。

業務の一部を地方へアウトソース―業務品質向上とコスト削減を両立

そのような流れから、近年は日本国内への回帰の動きが強まっています。「ジャパン・クオリティ」のものづくりやサービス、ビジネスのスムーズな推進をはじめ、国内ならではのメリットをビジネスに活かせます。

しかし、国内回帰といっても、東京に象徴される大都市圏では人件費、そしてオフィス賃料などの固定費が重くのしかかってきます。コスト以外にも、近年の売り手市場のため、大都市圏では優秀な人材確保がより難しくなりつつあります。

そこで注目されるのが地方です。何といっても大都市圏に比べて、固定費が大幅に抑えられるのが魅力。優秀な人材も地方なら数多く残っています。大都市圏から遠いというデメリットも、近年は交通網や通信手段の発達などによって、さほど影響を受けません。

また、大きな視点で見れば、雇用促進を中心とする地域振興、東京一極集中の解消にもつながります。しかも自治体によっては、雇用関係に手厚いサポートを望めます。

とはいえ、自社のビジネス機能のすべてを地方で行うのは難しいという企業が多いのが現状です。そうなると、一部を地方へアウトソースするという選択肢が有効になります。ロケーションの制約を受けない業務は地方で行うことで、業務の品質を保ちつつ、効率化とコスト削減を果たせるようになるでしょう。オフショア(海外)からニアショア(地方)活用へ、確実に国内回帰のニーズが高まっています。

開発運用拠点の国内回帰