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災害発生前に準備しておくこと

災害が発生すると、パソコンなどのIT機器が使えなくなってしまいます。地震などの場合は機器の落下などにより物理的に壊れることも理由のひとつとして挙げられますが、機器が正常であっても停電によって使えなくなることもあります。
また、パソコンだけでなく、サーバーやネットワーク機器など、ほぼすべての機器が停電になると使えなくなるため、サーバーが置かれている場所が停電になってしまうと、本社などに影響がなくてもデータを取り出せない、さらにはデータの消失という状態が発生する可能性もあるのです。

自社内で複数拠点にてデータをバックアップできるのであれば問題ないかもしれませんが、データセンターやクラウド環境にバックアップすることが一般的と言えると思います。データセンターに使われる建物は災害などのリスクを想定しており、停電に対してもUPS (無停電電源装置) や自家発電装置などを備えています。さらに自家発電装置の燃料を24時間や48時間の連続稼働が可能なように備蓄していることが一般的で、燃料供給会社と優先給油契約を締結するなど、災害発生時にも可能な限り長く電気を供給できるのです。

また、クラウド環境を使用することで、災害が発生してもデータを守ることができます。例えば、東日本大震災では津波被害により4つの市町で戸籍データが滅失しましたが、法務局が提供したデータにより再製することができました。
災害が発生した地域以外では、クラウド環境に接続するだけで通常通りの業務を実施できる可能性もあり、速やかな業務再開にもつながります。業務への影響を最小限に抑え、早期の復旧を実現するには、このような環境を整えておくことが求められます。

引用:『事業継続ガイドライン 第三版』(内閣府)

引用:『事業継続ガイドライン 第三版』(内閣府)

その他にどのような準備が必要なのかを把握するには、BCPに関するガイドラインを参照し備えましょう。

『事業継続ガイドライン 第三版』(内閣府)

災害発生後に重要なシステム

災害ではデータやシステムを守るだけでは意味がありません。組織が業務を再開するには、従業員の存在が欠かせません。その従業員がどこにいて、どのような対応が可能なのかを把握しておくことは重要です。
しかし、災害が発生した直後は電話がつながらず、従業員と連絡が取れないことは珍しくありません。連絡網などを作成していても、それが機能しない状況が発生するのです。LINEやSNSなど災害時でも気軽に連絡できる仕組みが多く登場していますが、人数が増えてくると個別に状況を確認するのは大変です。

そこで、最近では「安否確認サービス」が多く使われています。安否確認サービスを導入していると、災害が発生したときに、従業員に安否情報を登録するようメールを一斉送信することができます。メールを受け取った従業員が自身の安否情報を登録することで、管理者が状況をまとめて把握できるのです。
安否確認サービスでは携帯電話事業者との間で優先して送受信する契約を締結していることもあり、電話やメールなどがつながりにくい状態でも、迅速に安否確認を実施できます。

さらに、従業員だけではなく取引先の安否確認も可能なサービスも登場しています。自社だけですべての業務が実施できるとは限らず、仕入れ先や発注先が災害に遭うと業務が止まってしまうことも考えられるのです。
取引先の拠点がどこにあり、その業務が止まると自社にどのような影響があるのか把握できているでしょうか?個人担当者に任せていると、災害発生時は混乱状況になり、初動対応が遅れてしまう可能性があります。
このような状況を考えても、スムーズに状況を把握するためにITの活用は必須になっています。

災害発生後スムーズに事業継続を行うために

多くの人にとって災害は、「ニュースでは聞くけれど実体験したことがない」ことかもしれません。被害に遭ったけれど幸いにもビジネスには影響がなかった、という方もいるでしょう。
ところが災害は突然やってきます。災害発生後に慌ててもどうにもなりません。どのような準備が必要で、実際にどのような行動をすればスムーズに復旧できるのか、訓練をしておくのも大切です。学校だけでなく企業でも消防訓練が定期的に行われているのと同じように、災害が起きたと仮定し、被害が発生した場合にどこにバックアップがあり、どうやって復旧するのか、一度試してみるとよいでしょう。
なお、こちらでご紹介しているのは一例であり、詳しくお知りになりたい方は総務省が公開している『ICT部門における業務継続計画訓練事例集』などをご参照ください。

災害による影響を最小限に抑えるためには、リモートワークを推し進めることも対策のひとつ。これまではオフィスが被災すると、業務を継続できませんでしたが、リモートワークが前提の業務環境を構築しておけば、インターネットに接続できればどこからでも仕事ができます。
また、ワーケーションの活用などにより従業員が都心に集中しないことで、拠点を分散できることもメリットです。多くの場所で同時に災害が発生することは少なく、一部の従業員だけでも業務を継続できれば、組織としてのリスクを低減することもできるかもしれません。

さいごに

業種によってはオフィスや店舗でしか対応できない業務もあり、一律にすべての企業、すべての部署が対応できるとは限りませんが、可能な部署から少しずつ導入してみてはいかがでしょうか?そして、すでに導入済みの企業であっても、現状で十分な対策が実施できているか見直してみましょう。