「オンライン資格確認」は医療機関だけでなく患者にとってもさまざまなメリットが期待される新しい取り組みです。しかし、その中身について十分理解できていない方や、「オンライン資格確認」自体をまだ知らないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、オンライン資格確認について詳しく紹介していきます。

そもそも「オンライン資格確認」とは何か、そして導入開始の背景とは?

はじめに、「オンライン資格確認」の概要を簡単に説明しましょう。

医療機関や薬局では、患者が訪れた際に患者が加入している医療保険(=被保険者資格)を窓口で確認しますが、この作業を「資格確認」と呼びます。この資格確認をオンライン対応させたものが、その名の通り「オンライン資格確認」となります。

オンライン資格確認では、医療機関や薬局が患者の「マイナンバーカード」あるいは「健康保険証」を利用し、オンラインで患者の資格情報を取得・取込することが可能です。マイナンバーカードの場合、患者はマイナンバーカードを窓口に設置されたカードリーダーにかざします。そして、カードリーダーが備える顔認証機能または窓口スタッフによる目視、あるいは4桁の暗証番号入力によって、患者の本人確認を行います。一方で保険証の場合は、これまでと同様に患者は保険証を提示し、窓口スタッフが健康保険証の記号番号等を入力することになります。

            



「オンライン資格確認」の概要イメージ
 

図1 「オンライン資格確認」の概要イメージ
出典: 厚生労働省保険局 令和3年7月「健康保険証の資格確認がオンラインで可能となります」            



厚生労働省によるデータヘルス改革の一環として 10 月より本格運用が開始

ではなぜ、このような仕組みが新たに導入されようとしているのでしょうか。1つのポイントとなるのが「2025年問題」です。

2025年問題とは、2025年に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となることにより、日本の社会にさまざまな影響が生じることを指します。医療・介護領域において、その影響による大きな課題として「医療費や介護給付費等のさらなる増加」が挙げられます。そういった状況下において、効率的かつ質の高い医療や介護を提供するために、データ利活用の基盤を構築し、個人に最適な医療や介護を提供していこうという動きがあります。

その取り組みの1つとして、厚生労働省では「データヘルス改革」を推進しています。データヘルス改革では、膨大な健康・医療・介護のデータを収集・分析し、健康・医療・介護分野でのICT利活用が「供給者目線」から「患者、国民、利用者目線」になるように、健康・医療・介護の分野を有機的に連結したICTインフラの構築を目指しています。そしてオンライン資格確認は、このICTインフラを構築するための一環というわけです。

オンライン資格確認のメリットは医療機関や薬局だけでなく患者側にもあり

次に、オンライン資格確認を利用した場合にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

              

医療機関や薬局のメリットはレセプト返戻と入力作業の効率化

まず挙げられるのが「レセプト返戻の作業削減」です。オンライン資格確認では医療機関や薬局の窓口で直ちに患者の保険資格を確認できるようになるため、資格過誤によるレセプトの返戻が減り、窓口スタッフの手間も削減されます。

また、従来の資格確認では患者から健康保険証を受け取った後、保険証記号番号や氏名、生年月日、住所等を窓口スタッフが医療機関システムに手入力する必要がありました。しかしオンライン資格確認であれば、マイナンバーカードを利用した場合はマイナンバーカードに内蔵されているICチップを利用するため、患者の最新の保険資格を自動的に医療機関システムで取り込むことが可能です。また、保険証の場合でも最小限の情報入力で資格情報を取り込めることから、「保険証の入力の手間削減」もメリットとなります。

なお、オンライン資格確認の導入にあたっては、医療機関や薬局への補助も用意されています。例えば、顔認証付きカードリーダーが無償で提供されるほか、それ以外に必要な費用補助も受けられるので、導入の際には活用すると良いでしょう。

              

患者のメリットは、待ち時間短縮と限度額情報の取得手続きの簡略化

一方、オンライン資格確認によって医療機関や薬局の窓口における手間が削減されれば、患者にとっては必然的に「待ち時間の短縮」が期待されます。また従来の場合、限度額適用認定証等は加入者(=患者)が必要に応じて保険者に申請しなければ発行されませんでした。しかし、オンライン資格確認を導入していれば、患者から保険者への申請がなくても医療機関や薬局の窓口で限度額情報を取得できるようになります。そのため、患者は「限度額以上の医療費を窓口で支払う必要がなくなる」というのも見逃せないメリットでしょう。



オンライン資格確認は将来的に手術や医療機関名、薬剤情報閲覧も可能に

マイナンバーカードを介して患者の詳細な医療データも確認可能に

もう1つ、「オンライン資格確認」の今後の展望についても触れておきましょう。

例えば今後の予定として、オンライン資格確認を導入した医療機関や薬局では、マイナンバーカードで患者の意思を確認したうえでの「患者の薬剤情報・特定健診情報の閲覧」が可能になります。さらに、災害時には特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができなくても閲覧できるようになります。

これにより、平常時はもちろんですが、旅行中や災害時に怪我をしてかかりつけ医以外に受診したり、避難先等で薬がなくなったりした場合でも、医師や薬剤師に患者データを確認してもらったうえで診察や薬の処方をしてもらえる(=より良い医療が受けられる)ということが想定されます。これは医療機関や薬局だけでなく、患者側も注目しておきたいポイントです。

このような動きは、データヘルス改革の「データヘルス集中改革プラン」と密接な関係があります。データヘルス集中改革プランでは、既存インフラを活用しつつ、「医療情報を患者や全国の医療機関等で確認できる仕組み」「電子処方箋の仕組み」「自身の保健医療情報を活用できる仕組み」という3つの仕組みの構築や拡大を進めています。この中で、「医療情報を患者や全国の医療機関等で確認できる仕組み」においては「オンライン資格確認」「レセプト振替(レセプト医療情報の抽出等)」「特定健診・医療費・薬剤情報」が設定されており、手術・移植・透析・医療機関名等の情報も閲覧可能になる予定です。このような仕組みが実現されれば、今後の重要なデータヘルス基盤となるのは間違いないでしょう。

            



データヘルス集中改革プランにおける「医療情報を患者や全国の医療機関等で確認できる仕組み」のイメージ
 

図2 データヘルス集中改革プランにおける「医療情報を患者や全国の医療機関等で確認できる仕組み」のイメージ
出典: 厚生労働省 令和2年7月 第7回 データヘルス改革推進本部「資料1 新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プランについて」            



さいごに

このように、医療機関や薬局は今後、新しく構築される医療情報システム等を活用し、患者データ等に基づいた医療の質の向上や効率化に向けた取り組みが求められることになるでしょう。「オンライン資格確認」は、その取り組みを実現させる第一歩となるはずです。

            

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