クエストでは現在、クライアントへより高い付加価値を提供すべく、新しいテクノロジーのキャッチアップを精力的におこなっている。中でも、働き方改革などの影響で生産性向上を掲げる企業が多いこともあり、RPAは注力するテクノロジーのひとつとなっている。SIerとして、システム構築に長けるメンバーが社内のシステム改革に乗り出した結果、生じた動きとは何か?

今回のプロジェクトでRPA導入を推進した、金融システム事業部の梅北、石川、樋口と、経理部を率いる執行役員経理部長の松本、同じく経理部の遠藤に話を聞いた。

課題と経緯

生産性向上の気運が高まり普及が見込まれるRPAに焦点

既存事業の堅調な推移に支えられ、2019年度も売上を伸ばしているクエスト。政府が推進するIT活用の動きなどもさることながら、中期経営計画にもとづく社内刷新もその業績に大きな影響を与えている。しかし、既存事業頼みということは環境が激しく変化するIT業界では、時代に取り残される可能性が否めないのも事実だ。そのため、事業者には新しいテクノロジーと向き合い、吸収していく柔軟性が求められることになる。

クエストもSIerとして、常に新しいテクノロジーをプロジェクトに取り入れてきている。その中でもここ数年、ニーズが高まってきているのがRPAの導入だ。その背景には政府が推進する働き方改革がある。IT導入補助金の影響などもあり、多くの企業がITを活用した生産性のアップを目指した動きが活発化している。クエストでは、そうした動きを見据え、2017年4月にRPAに関する全社横断のプロジェクトを結成。注力するテクノロジーと定め、社内勉強会などを通じ知識、スキルの研鑽に努めてきた。

時代の要請という側面もあったが、RPAという概念自体がまさにITの本質を捉えていることも関係している。ITは既存の業務を大きく効率化し、新しい創造的な業務へのシフトをもたらす。デジタルトランスフォーメーションの必要性が叫ばれる日本において、今後大きなニーズが創出されることは間違いない、と見込んだのだ。

金融システム事業部 梅北


クエストではクライアント案件への対応を着実に進めていくことで、さまざまなケースでのノウハウが蓄積されてきた。そのノウハウをさらに昇華させるべく、社内へのRPA導入に着手することが決まった。過去のクライアント案件での実績を踏まえ、属人的な定型業務がいくつか存在し、改善余地も大きいことが見込まれる人事、経理部門に。業務の詳細をヒアリングした結果、まず経理部の複数業務にRPAを導入することが決定した。プロジェクトの主担当として開発チームを率いた梅北は当時を以下のように振り返る。

導入

AI-OCRとRPAを組み合わせ請求書に関する業務を効率化

「経理部門から自動化のリクエストが挙がってきた業務は14に及びました。しかし、それらを精査した結果、作業量の多さが大きな負担となっている、携帯電話の請求書に関する事務作業を自動化することが導入による効果を得やすく、優先度が高いという結論に達しました。しかし、請求書など書面の内容を判別することはRPAツールだけでは対応できないため、判別部分に画像認識機能の併用を提案しました。

画像認識はOCR機能を有するツールが担うことになりますが、従来のOCRはテンプレートの存在を前提とします。つまり、同じテンプレートの内容を読み分けることはできるものの、認識するテキストの場所が常に変化するようなイレギュラーな対応は得意としていません。そのため、AI-OCR機能を搭載したツールを導入することになりました。そうすることで不定形な帳票でもルールエンジンを用いてデータ化することができます。もちろんAI-OCRのほうがコスト高となりますが、効果検証という側面もあったため、承諾されました。」

RPAはツールの導入が前提となるが、基本的にツールは有償であり、費用対効果が見合うかどうかを検討することは導入にあたって重要なポイントとなる。費用対効果が合わなければ導入する意味はないといえるからだ。しかし、一概に数字で算出されるものだけで判断するのもおすすめできない。RPAで効率化できる業務には、決して付加価値が高いとはいえない業務も存在しており、こうした業務から従業員を開放することは仕事へのモチベーションアップにつながることもあるからだ。執行役員として経理部門をリードする松本は以下のように主張する。

執行役員経理部長 松本

「経理部門はバックオフィス、コストセンターと言われるように、売上に直接寄与する部門ではありません。そのため、常に効率化を意識して業務には取り組んでおり、それぞれ従業員の中では最適化されています。しかし、新しいテクノロジーを取り入れることで、これまで以上に業務効率が上がるのであれば採用するべきでしょう。RPAを導入することで、本来人間でしかできない付加価値の高い業務に充てることが重要です。これまでの単なる経理担当から脱皮し、『戦略経理』とも呼べる創造的な存在に変化していかなければなりません。今回のプロジェクトはシステム部門主導ではありますが、未来を見据えた動きとして私たちも積極的に関与しました。」

アジャイル型で進められたRPAの導入プロセス

クライアントから業務を請け負う立場のクエストにとって、クライアント業務が最優先。社内でのプロジェクトはそれら業務の合間に進めていかざるをえない。そのため、プロジェクト発足から実際のRPA導入まではおよそ半年の期間を要することとなった。

経理部 遠藤

「中断を挟みながら、実質的には2か月程度でRPA導入に至りました。その期間に計6回のミーティングを実施。キックオフのミーティングで導入する業務を決定、詳細の業務内容を開発チームのメンバーに伝えました。2回目のミーティングでは、組みあがったものでデモンストレーションを見ることができ、あらためてそのスピード感には驚かせられました」と経理部の遠藤はプロジェクト進行の経緯を述べる。

しかし、RPAツール導入の難しさはこれで終わらないところにある。特に今回は不定形帳票を画像認識機能で読み込むことをミッションとしていたため、当初は多くのエラーに悩まされた。その都度、障害を一つずつ取り除きつつ、業務の細部を詰めていく。6回のミーティングのうち
4回はこうしたすり合わせがおこなわれることとなった。

「RPAツールの導入は適用業務がシンプルであればさほど苦戦することなく導入できます。しかし、企業内で処理される業務はそのほとんどが複雑な工程を経ています。導入にあたってはその工程を文書などで可視化し、双方で認識に相違がないかを確認します。しかしそれでも実際にツールを動かしてみると、エラーが生じるものです。その場合、文書には落とし込まれていなかった作業手順を改めて組み込むことになります。こうした地道なすり合わせ対応を経てエラーが生じなくなればリリースできます。


金融システム事業部 石川

今回のプロジェクトの場合、AI-OCR機能を採用したことで、ハードルが上がりました。というのは、OCRツール全般にいえることですが、100%の判定率は見込めないためです。AI-OCRツールの場合、ルールエンジンに学習させることで判定率が向上します。しかし、その学習にも時間と手間が必要となります。」と、開発チームの担当である石川は両ツール導入の難しさを強調する。

このように経緯を振り返っていくと見えてくるのが、いわゆる従来のシステム開発と開発プロセスが異なることだ。いわゆる「ウォーターフォール型」と呼ばれる、要件定義を経て仕様を決め開発、リリースという進め方と親和性が高くないのだ。もちろん、クライアント案件ではそのように進める場合もあるが、多くの場合は最近のウェブアプリケーション開発などで浸透している「アジャイル型」の開発プロセスを採用しているという。まずベースを組み上げ、高速にトライ・アンド・エラーを重ねてリリースする。そしてリリース以降も業務内容の変化に逐一対応することを考えれば、こうした変化もうなずけるところではないだろうか。RPA導入の注意点について、開発チームで実際のプログラミングを担当した樋口は以下のように述べる。

金融システム事業部 樋口


「RPA導入において注意したいことが、アプリ上の処理だけなのか、GUI上の動作も自動化するのか、という点です。前者の例で言うと、Excelのマクロで実現できるような業務は自動化も容易です。一方、GUI上の作業も含める場合だと、端末依存の部分も考慮する必要が出てくるため、難易度が一気に上がります。また、最近のクラウドサービスなどはGUIが頻繁にアップデートされるものも少なくありません。例えば、ボタンの位置が1ピクセルずれたということで処理のエラーが生じたこともあります。このような場合、API連携などで回避できないかという検討をおこないます。

RPAツールを用いて作業を自動化する場合、このようにツールで処理するという特性を踏まえて自動化プロセスも検討していく必要があります。
ただ単にこれまでの業務を可視化して、忠実にRPAツールのルールに
落とし込めばOK、とはいかないのが難しいところかもしれません。」

クライアント案件で数多くのRPA導入に携わっていても、案件を経るごとに新たな気づきを得られるという。今回の社内プロジェクトではAI-OCR機能との連携もあり、ここでも複数回の調整を余儀なくされている。

「たかが携帯電話の請求書ですが、法人のものは項目が多岐にわたります。さらに、印刷されたものの場合、複数の紙面に明細がまたがることがあります。人間であればその状況を一目で理解できますが、AI-OCR機能の場合は学習させていかなければその変化をエラーと捉えます。AIであれば簡単にそうした違いも理解できるわけではなく、人間が教え込まなければならないというのは、今後の業務効率化を考えるにあたっても大きな気づきとなりました。」と経理部門の遠藤はプロジェクトを回想する。

効果と展望

数字以上のインパクトにより社内に新たな風が吹き始めた

AI-OCRはAIスキャンロボ®、RPAはWinActor®を使用し、プロジェクトの発足から半年の期間を経てリリースに至った請求書業務の自動化。その結果、以下の図で示しているように、元々110分の工程だったものが88分へと、1回あたり22分、約20%の業務時間削減を実現することができた。しかし作業時間以上に大きかったのが、こういった業務に発生しがちなヒューマンエラーがなくなったことだ。

請求書を目で見てその内容をパソコンで入力するという作業の場合、人間である以上ミスをする確率はゼロにはならない。入力後の集計で数字が合わない場合、全ての入力内容を再チェックすることになるため、業務時間の損失は決して少なくない。ツールで自動化することにより、そうした懸念がなくなったことは大きなプラス材料となった。さらに、この入力作業工程を他業務と並行してできる、という点も評価に値するという。松本は以下のように説明する。





「【ひとつの業務で22分の時間削減】という結果だけ見ると、インパクトは小さいかもしれません。しかし、実際の導入を経て導入現場である私たちは大きな手応えを感じています。ひとつに、ヒューマンエラーを気にする必要がなくなった、ということは業務進行もより計画的に進められることを意味します。加えて、並行して業務を進められるということはすき間時間を活用できるということです。例えば、昼食時間の前に自動化を開始すれば、昼食後にはその処理が完了します。まずはひとつの業務ですが、今後より多くの業務に適用されることで多くの業務が自動化できれば、業務時間の使い方も大きく変わっていくはずです。今回のプロジェクトを契機に、経理業務の新しい在り方が変わっていくようにリードしていきたいと考えています。」

さいごに

今回のプロジェクトを進めるにあたり、まずスモールスタートで始めることを意識し、確実性の高い業務を対象とした。その結果として数字以上のインパクトを社内にもたらすことができた。RPAという新時代のツールを用いて実際の業務を効率化することで、クエストの社内では新たな動きが確実に芽生え始めている。


取材日:2019年9月11日

※AIスキャンロボ®は、ネットスマイル株式会社の登録商標です。


※WinActor®は、NTTアドバンステクノロジ株式会社の登録商標です。

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